-後発医薬品と先発品の違い

参考文献:ジェネリック医薬品Q&A(じほう)
     製剤学(廣川書店)
先の後発医薬品①でも述べたように、後発医薬品は先発品と有効成分が同一で、投与経路、用法・用量、効能・効果が同じ医薬品です。
しかし、添加剤は違います。通常、医薬品は主薬(有効成分)に下記のような添加剤を加えて製剤化します。

  1. 賦形剤:製品に大きさと質量を与える。(乳糖、白糖、デンプン、結晶セルロース、炭酸カルシウムなど)
  2. 結合剤:成分粒子を結合させて硬度や形状を保つ。(デンプンのり液、メチルセルロース、ポピドンなど)
  3. 崩壊剤:消化管内での崩壊を促進させる。(デンプン、カルメロースCa、炭酸水素Naなど)
  4. 滑沢剤:粉末の流動性を良くする。(ステアリン酸Mg,タルク、マクロゴールなど)

これら添加剤は、「医薬品添加物辞典」に収載されたものであれば、先発品と異なっていても後発品に使用できます。そして、日本製薬団体連合会は添加物に関して全成分表示を行うと定めています。但し、妥当な理由があるなら、取引上の機密と判断される成分は記載除外が認められています。つまり、添付文書には載っていない添加剤もあることになります。
また、固形製剤における有効成分の安定化や服用性向上のために、錠剤や顆粒の表面にコーティングをかけることもあります。特に、胃腸障害防止や胃酸による効力防止、作用発現を遅らす為の腸溶性剤皮(エンテリックコーティング)には各種製剤特許が施されています。
後発品の承認申請には、先発品に求められた安全性・有効性試験は先発品データで担保される為不要で、品質の安全性(規格及び試験方法、加速試験)と先発品との生物学的同等性を証明する資料(溶出試験とバイオアベイラビリティ試験(AUC,Cmax))のみになります。
それでは、添加剤が変わっても、後発品と先発品は”等しい効果が得られる”のでしょうか。
①例えば、有効成分トリアゾラムを含む超即効型睡眠導入剤:先発品”ハルシオン0.125mg錠”と後発品”ハルラック錠0.125mg”を比較すると、添加剤の中にハルシオンはジオクチルソジウムスルホサクシネートは入っていますが、ハルラックには入っておらず、その代わりにヒドロキシプロピルセルロースが入っています。
その為か、最高血中濃度到達時間はハルシオンが1.2時間、ハルラックが1.06時間と大差はありませんが、半減期ハルシオンが2.9時間に対し、ハルラックは3.7時間となっています。効き方は同じだが、ハルラックの方が排泄しにくく、薬効が残り易いことがわかります。
また、ハルシオン0.125mg錠は以前にも書きましたが、賦形剤の乳糖の輸入元を変えたことで溶出時間が延びた為、現在販売はしていません。また、ハルシオンには0.25mg錠があるのですが、0.125mg錠とは乳糖の輸入先が元々異なる為溶出時間が異なっています。
②不安定な薬物ランソプラゾール(先発品タケプロン)は、武田薬品が特許を持つ安定化剤を用いている商品ですが、後発品はこの安定化剤を使えない為、結局AUCには約1.7倍の違いがあります。
③注射剤は、後発品に不溶性異物や夾雑物の混入が多いとされています。また注射剤には、内服薬のような評価本”オレンジブック”もありません。さらに、ガラスアンプルの材質などと添加剤の化学変化も生じる可能性があり、先発品とは異なる薬効が生じる可能性があります。
④外用剤には、先発品に特に製剤上の工夫が多く施されています。例えば、放出制御のTTSなどがそうです。ツロブテロール製剤の先発品”ホクナリンテープ0.5mg”と後発品では半減期で2時間の差(後発品の方が早い)がありました。1日1回貼付のこのテープが早く半減期を迎えたら、徐放性製剤といえるのでしょうか。
⑤同様に、降圧薬”ニフェジピン”の徐放性製剤の場合、後発品で放出が早い為反射性頻脈が起こったものがあります。
以上のように、”同成分は同薬効である”といえども、後発品と先発品には違いがあるものもあります。