一般医薬品ネット販売解禁・・・第三の矢

2013年6月5日夕刻、安倍首相が経済政策「アベノミクス」の中核に位置づける成長戦略、いわゆる第3の矢を放った。

この成長戦略の主旨は、規制緩和を推し進めることで民間活力を高め、国民総所得を高め、生活を豊かにするところにある。
医療においては、再生医療の市場を拡大し、医療機器の認証を迅速化、国外への輸出を高め、健康食品の機能性表示を可能とする仕組みを作り、一般医薬品のネット販売を原則全面解禁するとある。

確かに、再生医療を国としてバックアップし、医療機器を積極的に海外に輸出すれば、市場は拡大し企業の利益は増えるだろう。
しかし、一般医薬品のネット販売を解禁することが市場を拡大することになるのだろうか。
画期的新薬の出ない一般医薬品市場において、それは限られたパイの奪い合い、企業間の売り上げの移行でしかなく、成長戦略に寄与するものではない。第3の矢などにはなりえないのである。

そもそも、医薬品は売り上げを増やすべき商品なのだろうか。
本来人が健康であれば、医薬品などは必要がない。
「薬は飲みたくないのだけれど…」と話す市民は山ほどいる。
それでも仕方ないから、薬を飲まなければならない。
つまり、必要ない状態なら売らない、そうして人を健康にし、信頼を得るのが薬剤師の任務なのである。

経済人が、商売の販路拡大のために医薬品を扱わせろというのとは、販売における立ち位置が真逆であり、医薬品のリスクをワンクリックによって国民に放り出す姿勢には、医療人として納得できないのである。