右向け右

 学生時代、朝礼や体育祭の整列の時に良く聞いた「右向け右、前へならえ。」。
 社会人になってからは、とんと聞きなれぬ言葉になった。
 ただ、その言葉から思いつく姿は、テレビのニュースでよく見る。
 国家主席を前に行進する軍隊。高くあげられる足に、揃った列。
 誰もが同じ方向に歩む姿に、今となってはなぜか”うすら寒さ”を覚えるのは私だけだろうか。

 特定秘密保護法案、かつては多くの意見が交わされたであろう自民党内でも、誰もが黙して語らず、まるで”右向け右”だ。
 文化の熟度は、人の考え方の多様性と、それを尊重する姿勢にある。
 右を向かない人にとっては、この国は息苦しい。いじめの土壌もそこにある。
 左もあっていいというだけで、どれだけ人は自由となり、心が豊かになるだろう。

 医療用医薬品のネット販売がなぜいけない。
 ケンコーなんたらの社長が田原総一郎氏にこう言ったそうだ。
 「だって医師が処方箋を書いているんですよ。」
 医師が処方箋を書けば、絶対的に正しいだろうか。
 人はミスはしないのだろうか。

 "医療におけるヒエラルキーのトップにある医師は常に正しい。"
 ものを考えず、”右向け右”を実践するかのようなかの社長の発言に、ため息をつくのは私だけだろうか。