薬局薬剤師の果たすべきこと。

12月10日の日本経済新聞:経済教室欄に、慶応大学の駒村康平教授が「診療報酬改定の論点〜薬局薬剤師の役割見直せ」と題する記事を書かれている。
診療報酬は、財務省の決める配分比率を受け、細かな中身を中医協で決めていく。
これまで医科・歯科・調剤(薬局)の配分比率は1:1:0.3を保持し、今回の改定でも日本薬剤師会ではこの比率を守るよう、厚労省に申し入れている。
教授は、この前例踏襲的で意味のない改訂をやめ、まずは薬局薬剤師が持つ機能を果たしてみせよと論じているのである。
現在薬局の70%が門前にある。足腰の機能が衰えた高齢者や障害者を思えば、それ自体が悪いとは私自身は思わないが、大病院前に並ぶ薬局の乱立や、医療テナント・医療モールと称する中にあって、集注率を下げ、処方箋を枚数を稼ぐ薬局が、かかりつけ薬局とは思えない。
教授は、地域の中にあって、患者の家に眠る残薬を処理したり、他科受診により起こるポリファーマシー(多剤処方)によって相互作用・副作用が生じ、その結果起こる有害作用を止められるのは、医師ではなく薬剤師だと語る。薬物動態や薬物効果から多剤処方を整理して減薬を試み、適切な薬物療法を実現するのは可能だと論じているのである。
これを現実に行えば、現時点では収益は下がるだろうし、時には医師との摩擦も生じるだろう。
しかし、本来薬剤師が果たさなければならないのは、多くの調剤を行って稼ぐ利益率の高い対物業務ではなく、手間がかかって利益率が低くても行う対人サービスである。
医療とはそういうものであり、そこが明確にできれば、患者家族がその薬局・薬剤師を選ぶのである。
変革の中にこそチャンスもある。経済は時に本質を語りかける。