骨粗しょう症への理解

日本経済新聞2007年1月19日掲載記事によると、東京大学などでCTの画像を基に骨強度を予測するソフトウェアが開発されたといいます。
一般に骨粗しょう症は骨密度によって診断されますが、実際には骨密度は骨全体に均一ではなく、骨密度の低い部分では、たとえ検査値が高いと測定されたとしても骨折が起こるため、CT画像からこの骨の骨強度を予測する手法が開発された訳です。
一般に骨組織では、破骨細胞による骨吸収(骨の溶解)と骨芽細胞による骨形成(これをリモデリングといいます)がバランスよく繰り返され、骨量が一定に維持されています。
骨吸収には副甲状腺ホルモン(PTH)が作用し、骨形成では骨芽細胞が骨基質タンパク質(コラーゲン等)を作り、これにハイドロキシアパタイトを沈着させて骨が形成されます。
骨粗しょう症は、骨質(骨量と骨基質の比)が一定のまま骨量が低下する状態を言います。
症状
腰痛・背部痛や脊椎の圧迫骨折・大腿部骨折・前腕とう骨の病的骨折が起こります。
原因
主たる原因は二つあり、一つは閉経によるエストロゲン(骨吸収抑制作用を持つ)分泌の低下です。その結果、破骨細胞が活性化し、骨吸収が促進され骨量が減少します。
もう一つは、加齢により腎機能が低下するため、Ca吸収に不可欠のビタミンD3産生が低下し、その結果Ca吸収は低下して骨形成ができなくなり骨量が低下します。
50歳以上の女性に骨粗しょう症が多いのはその為です。
お薬による治療
エストロゲン製剤(エストラダームエストリオール)
   エストロゲンを補給するため閉経後骨粗しょう症には有効です。
②カルシトニン製剤(エルシトニン・サーモトニン)
   破骨細胞に直接作用して骨吸収を抑制すると共に、骨芽細胞にも働き骨
   形成を促進します。
   また、鎮痛作用も持つため、脊椎骨折に有効です。
   但し、経口不可なので注射薬しかありません。
③活性型ビタミンD3(ワンアルファ・アルファロール・ロカルトロール
   腸管からのCa吸収を増加させ、骨芽細胞を活性化して骨形成を促進しま
   す。
   老人性の骨粗しょう症に有効です。
④ビスホスホネート製剤(ボナロン・フォサマック・ベネット・アクトネル)
   骨の無機質表面にはハイドロキシアパタイト(リン酸化合物)が存在し、
   このお薬はこれに吸着することで破骨細胞の骨吸収を強力に抑制してい
   ます。
   但し、金属を含むビタミンや制酸剤と併用するとキレートを形成し、吸
   収が低下します。
   またコーヒーやオレンジジュースと共に摂取しても吸収が阻害されます。
   更に上部消化管障害の副作用、つまり食道に潰瘍を起こしたりもします。
   その為朝起床時に服用し、少なくとも30分は水を除く飲食並びに他の薬
   剤の経口摂取は避け、横になってはなりません。
⑤ビタミンK2製剤(グラケー)
   ハイドロキシアパタイトの生成を助ける事で骨量・疼痛を改善します。
   但し、血液凝固阻害薬のワルファリンの作用を弱めるため、併用は禁忌
   です。
⑥SERM製剤(エビスタ)
   エストロゲン製剤の持つ副作用を無くしたもので、閉経後骨粗しょう症
   に有効です。