墨攻

学生時代、中国の春秋戦国時代諸子百家に興味を持ち、その思想を色々調べた事があります。
仁・礼を重んじた孔子孟子儒家無為自然を謳った老子荘子道家等たくさんの思想家がある中、当時は老子が好きでした。
しかし、「後宮小説」で有名な酒見賢一の「墨攻」を読み、ビッグコミックの「墨攻」を読んだ後は、墨子墨家の思想が最も好きになりました。
-墨家
墨子の思想は基本的に十論(墨家十論)からなります。

  1. 非攻:侵略の戦いを非難する。
  2. 兼愛:全ての他者を愛する。
  3. 尚賢:能力主義による人材の登用
  4. 尚同:指導者の方針に従う。
  5. 天志:天帝は侵略と併合を禁止する。
  6. 明鬼:鬼神は犯罪者を処罰する。
  7. 節用:贅沢を戒める。
  8. 節葬:贅沢な葬儀を戒める。
  9. 非楽:音楽に溺れず勤労・節約に努める。
  10. 非命:宿命と諦めず、勤勉に働く。

墨子はこの思想を基に、諸国がお互いに平和共存する世界を作ることを唱えました。
この思想は映画「ブラザー・サン シスター・ムーン」(フランコ・ゼフィレッリ監督)で描く、聖者フランチェスコの生き方と共通するものがあります。
-映画「墨攻
墨攻」は現在封切り中の映画ですが、特に非攻・兼愛を説く墨家・革離の戦いを、「墨守」(攻めずただただ守り抜く)として描いた良い作品だと思います。(・・・・原作には無い主人公・革離の恋愛などは必要の無いシーンだとは思いますが・・・)
戦争には本当の意味ではどこにも勝者はいない、そしてこの悲劇が21世紀の今日でも世界中で今なお続いていることを映画は語っています。
しかし、戦乱が続く世の中で墨家は続いても、平時になると国民を統治する権力者には向かない思想でもあります。
事実、秦王朝が天下平定をした時には、墨家は弾圧され忽然と姿を消しています。
また、現実に人は清貧に甘んじ欲を消し去る事はできません。お金が欲しい、いい服を着たいと思う心を捨てる事は難しい事です。いくら清廉な思想の持ち主でも、人は年収や学歴、身に着ける物で判断しがちです。墨家が今の世の中では認められにくい世の中でもあります。
それでも私は墨家の思想を好ましいと思っています。
時代に合わせながら、無理することなく、ゆっくりと墨家が生き続ければと願っています。