後発医薬品変更率1%

2/3朝日新聞の記事に、1月31日厚生労働省諮問機関の中央社会保健医療協議会後発医薬品変更についての調査結果を発表した事が書かれていた。
それによると、保険薬局が昨年10月の1ヶ月に扱った処方箋の内、医師が後発医薬品への変更を認めたのは全体の17.1%、そのうち実際に変更されたのは5.7%、処方箋全体に対しては1%に過ぎなかったそうだ。
薬局のうち、後発医薬品への変更を説明していなかったのは27%。変更した薬局でも90%以上変更した薬局もあれば、5%未満の薬局もある。取り組みの差に問題があると言うニュアンスが書かれていた。
後発医薬品推進の理由
実は後発医薬品への変更「可」という欄が作られたのは、昨年4月の診療報酬改定による。国家財政における医療費の増大、また団塊の世代が前期高齢者・後期高齢者となる状況を考えると、今後更に増大する事が予想されるため、薬価の安い後発医薬品を普及させる事で、薬剤費を1兆円削減しようと厚生労働省は考えていたようだ。
変更「可」を押すと、処方箋発行元には1枚につき20円プラスして保険請求が出来る。収入が増えるのだから医師側はどこも変更「可」を押すだろう。しかし、それ以上の薬剤費の削減が出来ると予想できるのでこの改革がなされた。
昨年からTVで、有名俳優が「ジェネリック医薬品後発医薬品)はお薬代が半額から1/3にできます。」というCMが多数放映された。実はこういう状況があったためにこのCMができたのだ。
後発医薬品変更「可」の処方箋がきたら
さて、実際私達保険薬剤師はどうするかと言うと、変更「可」の処方箋を患者様が持参されると、後発医薬品に何があるのかを検索する。その後、患者様に先発品と後発品の薬価の差やお薬の内容、実際に保険で自己負担される金額の差を提示し、了解されると後発医薬品を調剤しお渡しする。また、変更された後発医薬品の名前を処方元の医療機関に連絡する。
この時、変更の初回のみ後発医薬品変更加算が認められ、100円を保険請求できる。勿論、患者様にも自己負担分だけ負担が生じる。最初に説明する自己負担金額の差にはこれも入っている。
後発医薬品変更を患者様は常に納得しているのではない
しかし、患者様の自己負担金には薬剤費だけかというとそうではない。薬局の調剤報酬は、調剤基本料・調剤料・各種製剤加算・指導加算と薬剤費の合計である。したがってCMのように患者様の負担額が半分になるような事はない。
実際計算して変更の差を提示すると、「なーんだ、こんなものか。それなら先発品のままでよい。」と言われる方が結構いる。
また、後発医薬品自体にも問題がある。折角変更してお渡しした患者様が次回には元の先発品に戻っている場合がある。「なぜですか。」とお聞きすると、「いやあ、あんまり効かなかった。やっぱり元の薬がいい。」とおっしゃる。
確かに「同じ成分は同じ薬効」は大原則だ。しかし、お薬には賦形剤や崩壊剤・着色剤などの添加剤が入っている。これはメーカーによって何が入っているかはマチマチだ。それによって薬効に変化があるのはあたりまえだと思う。現にハルシオン0.125mgは添加剤の乳糖の輸入元を変えただけで溶出時間が変わり自己回収している。
また、メーカーには製法特許があり、これは後発メーカーには真似できない。したがってこの特許を使う持続性製剤などは明らかに持続時間が変わってしまっている。
後発医薬品が全て先発医薬品と同じというわけではない。
−真面目に説明すれば
真面目に10分以上懸けてこの事を患者様に説明すると、「へー、そうだったの。」と言う患者様が多い。
新聞の記事のように90%が変更など、私自身はある訳がないと思っている。
変更率が高いほど取り組みが良いような記事の書き方には疑問を呈せざるを得ない。
しかし、27%も説明してない薬局がある事は薬剤師として恥ずかしい話だ。薬剤師として反省しなければならない。
後発医薬品変更はまだまだ過渡期の政策だ。
本当にこのやり方で医療費削減を目指すのなら、アメリカのような代替調剤を認めるべきだろう。
薬剤師は6年間をかけて薬の事を勉強している。
医師の処方する薬に代替できるものを考えるのは、やはり薬剤師だと思う。
日本における薬剤師の職能が認められれば、代替調剤も進んでいくだろうと私は思っている。