顔の見えない薬剤師

医療の世界で薬剤師は患者様にどのように見られているのでしょう。
医師や看護師は診療の中で実際に患者様の診断・治療に関わり顔を見せていますが、薬剤師はお薬の交付の場でしか患者様と顔を合わしません。
薬剤師としては、医師の発行された処方薬が患者様の体質にあっているか・用量に誤りは無いか・他に服薬された薬との併用に問題は無いかなどを、医師以外の目でチェックし問題があれば疑義紹介している、つまり処方薬への医師・薬剤師によるダブルチェックによって患者様への適切な薬の選択に関与しているつもりなのですが、患者様の目から見れば、医師に病状や併用薬を言っているのだから何をことさら薬剤師に言わなきゃならんと思われる方もいらっしゃると思いますし、実際煙たがられる事もあります。
日本薬剤師会が2006年8月に「医薬分業化での薬剤師によるファーマシューティカルケアの便益測定」という研究報告書を公表しています。
   http://nichiyaku.info/member/minfo06/pdf/beneki.pdf
ここには、薬剤師によるファーマシューティカルケアが全額負担になった場合、このようなサービスを受けたいかという質問があります。
①”受けたい”が14%、②”金額によっては受けたい”が37%、③”受けたくない”が40%、④”わからない”が9%となっており、データ値からみると一般にはこのサービスが理解されていないようです。
但し、副作用を自身で経験された方・身近に経験された方だけをみると、①”受けたい”が16%、②”金額によっては受けたい”が45%、③”受けたくない”が30〜35%と、このサービスに対する理解が若干上がります。
薬局が行う調剤は医療というサービスです。上記の研究結果は、このサービスが実際一般の方から見て、払う金額に見合った価値がまだ無いと感じられている方が多い事を意味しています。
しかし、医療における処方ミスや副作用発現を食い止めるこのサービスは、たとえ数%の効果であっても重要なはずです。
では何故私達薬剤師の行うこういった処方監査が、40%のもの方に理解していただけないのでしょうか。
それは、一つは薬剤師のコミュニケーション能力の無さに起因します。
つまり、自省として一般の方に理解できない言葉を専門職として使いすぎている様に思います。服用される患者様と同じ高さの目線でものを語っていないように思います。参考になる本を上げておきます。
薬剤師と薬学生のためのコミュニケーション実践ガイド―患者カウンセリング・服薬指導のスキルを磨く「コミュニケーション実践ガイド」竹内由一著じほう
竹内先生は私の恩師で薬物動態学の権威ではありますが、臨床薬学にも造詣が深く、薬剤師のわかりやすい言葉の使い方を提唱されています。
もう一つは、医療がサービス業であることを、薬剤師が認識不足なのではないかと思っています。
私が大好きな本を2冊上げておきます。
「サービスの法則」田辺英蔵著 PHP研究所
リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間「サービスを超える瞬間」高野登著 かんき出版

患者様の”かかりつけ薬局”を目指すよう厚生労働省は薬剤師に求めています。それには薬剤師が行っている調剤の意味をもっとわかりやすい言葉で理解して頂く事、患者様が求めているサービス(これは既にアンケート調査で患者様から要望の出ている、24時間対応やありうる副作用・相互作用の説明などでしょう。)の実現に努力し、行動する事が近道だし、ひいては”顔の見える薬剤師”になるための一歩だと思います。