75歳以上にかかりつけ医を

 朝日新聞によれば厚生労働省はhttp2日、75歳以上の高齢者向けに、公的な「かかりつけ医」制度を2008年をめどに創設する方向で検討に入ったといいます。
http://www.asahi.com/health/news/TKY200703020359.html
高齢者は複数の疾患を持つため、現在は複数の医療機関にかかっています。私どもの薬局にも、患者様が複数の医療機関の処方箋を持参してこられます。「かかりつけ薬局」として、これらの処方箋にある薬剤の相互作用などについてチェックし、問題があれば発行元の医療機関にご連絡をしているのですが、特定の医師が患者様の病状を総合的に診断・治療し、訪問診療を積極的に行うのであれば、患者様の在宅療養をより可能にする事ができ、さらに緩和ケアなど終末医療にも取り組んで頂ければ、患者様個人の意志に沿う医療が推進できます。
ただ、うがった見方をすると、以前「終末期医療・在宅医療・緩和医療・・その2」で療養病床を2011年には現在の38万床から15万床に減らす事を述べました。従って、この計画を実施するための受け皿として「かかりつけ医」創設が急務な為の検討なのかなとも思います。何故ならこの制度が定着するためには、24時間往診や在宅で終末を迎えられない人への支援が図られねばなりません。また、現在の開業医の診療項目の細分化という流れも改め、何でも診れる「かかりつけ医」という専門教育も必要となるからです。2008年の実施は難しいかもしれません。
そしてこの制度、実は005年12月に政府与党の発表した「医療制度改革大綱」を基にした、2008年実施予定の「新しい高齢者医療制度の創設」ともリンクします。
現在の医療保障制度は、健康保険(被用者保険)・国民健康保険・老人保健・公費負担医療から成り立ちます。その中で、老人保険(勿論、公費負担医療も)は、保険料を取っていません。平成16年度の老人医療費11.5兆円の内、患者一部負担金は1.2兆円、残りの10.3兆円の内、現役労働者からの拠出金が58%で公費が42%という現状です。従って高齢者が増える未来にあって、現役労働者の負担を減らすべく75歳以上の高齢者に対する高齢者医療制度の創設が必要という訳です。
後期医療制度にあっては、保険料も徴収されますし、この「かかりつけ医」制度にも関連する「診断群分類別包括払い制度(DPC)が取り入れられるでしょう。
「かかりつけ医」制度にDPCを組み入れる事によって、医療費の抑制が可能になるのです。
参考:図解 医療保険の改正早わかりガイド医療保険の改正・早わかりガイド」 日本実業出版社
もともと「かかりつけ医」制度は、イギリスにおける医療費抑制の為に実施された"Fmamily Doctor"制度が基本になっています。この制度によって、イギリスは他の先進国に比べてGDPに対する医療費水がかなり低く抑えられています。
しかし、逆に”Family Doctor"の紹介が無ければ病院にはかかれないという矛盾も抱えています。
医療費の効率的使い方は、医療経済学の大事な研究テーマであって、このお話はまた別の記事としてお伝えしますが、まずは今回の日本の「かかりつけ医」制度が、高齢者のニーズに合致した形で検討される事を望みます。