調剤薬局がうっとうしい・・・薬剤師の仕事

 YOMIURI ONLINE”発言小町”というサイトに、”調剤薬局がうっとうしい”というコミュが立ち上がり、話題を呼んでいます。
  http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2007/0516/130073.htm?g=01
 この中には、調剤薬局でお薬を貰われた患者様からの”不満”が書き込まれています。中には、言われなき中傷のようなものもありますが、大部分が今調剤薬局や薬剤師が抱えている問題点を如実に示しており、この”不満”に応えることが薬剤師を理解して頂く事、そしてより善き調剤薬局・薬剤師をつくるものと思い、今回その”不満”に対する”思い”を書き記したいと思います。
 ”不満”を要約すると、以下のようになります。

  1. 調剤薬局の窓口には、患者のプライバシーを守る配慮が欠けている。
  2. 患者様からの聞き取り・薬の説明時に、デリカシーの無い発言をする薬剤師がいる。
  3. 医師に症状・疾患名を話しているのに、何故薬剤師にも話さなければならないのか。
  4. 薬剤師の仕事は、医師の処方した薬の調剤だけであろう。
  5. 医薬分業の必要性。
  6. 調剤薬局で支払われる料金内容が不明瞭である。
  7. 調剤薬局には、土日休みが多い。

 ”プライバシー”については、現状では確かにその通りです。個人情報保護法の観点からも早急に改善すべきです。大きな店舗面積を持つ薬局では既に投薬窓口を個室にしている所もありますが、中小の調剤薬局は窓口を仕切りで区切ったり、投薬時は小声で話すなどでプライバシー保護をし始めています。ただ、店舗面積が小さい為に出来ない点も多々あります。どうか、その点はご理解を願います。
 ”デリカシーの無い発言”は、薬剤師一般論ではなく、個人的資質の欠如だと思います。医療に携わる薬剤師なら、患者様に対する発言には十分注意をするのは当たり前のことです、当然、経営者・管理者は当該薬剤師に注意をしているでしょうし、改善出来ないなら解雇も辞さずの姿勢をとるべきです。
 その他の”不満”については、医療の意味・医療制度・薬剤師の職務などについての一般の方への啓蒙不足に起因しているように思います。そこで、今回は”薬剤師の仕事”についてお話したいと思います。

  • 薬剤師の仕事

 皆さんが病気に罹られ、病院・診療所に行き、そこで施されるのが”医療”です。しかし、医療は医師が学ぶ医学だけではありません。実は、医療は医学・看護学・薬学などで構成されています。現在、医師は医学部で医学を学びますが、上の学年に行くと専門性の高い科別の学問になり、薬剤もその科に必要な薬を学び研究します。それに対し、薬学では”薬”を中心に、全ての診療科で使う薬を学びます。これが”薬のエキスパート”である所以です。同様に、看護学も専門的知識を身につけます。つまり、本来医療とは、それぞれの専門職:医師・看護師・薬剤師などで”チーム医療”として施されるべきものだと思います。
例えば、大病院を受診された場合、担当医師から調剤部に患者様への処方がオンラインで送られます。薬剤師は調剤部にあるコンピューターでカルテを見て、用法・用量・他の診療科で貰われた薬の有無を確認し、相互作用をチェックします。もし、問題があれば担当医に連絡し、他剤への変更や用量の変更を提案します。そうして初めて患者様へお薬が渡されるわけです。
 これが、町の診療所ではどうでしょう。医師は患者様の症状や検査データから処方を決定します。そして院外処方であれば、処方箋が発行されます。しかし、これが電子カルテのように、医師が直接処方薬を入力しない場合、受付でカルテを見ながら処方薬を入力するので、入力間違いが発生する可能性が出てきます。
 同様に、医師に他の医院での処方された薬や、処方される薬と相互作用のある食べ物を伝えていなかったら、誤った薬が投与される事になります。
 また、医師が患者様のアレルギー歴や併用薬との相互作用を見落とし、誤った薬を処方する事もあります。
 つまり、医師といえども、いろいろなファクターが原因で間違う可能性を秘めているのです。
 しかし、医療において誤った薬の選択は、患者様のいのちを脅かす危険性があります。
 調剤薬局で薬剤師はそのリスクを防ぐ為に働いています。患者様のカルテは閲覧できませんから、畢竟患者様に色々な質問をします。そこで問題のある薬の選択があれば、処方医に連絡し変更や削除をして頂いています。その事で未然に医療事故を防いでいるのです。
 病気でお辛い時に色々聞かれるたり、説明されるのは迷惑でしょう。わざわざ調剤薬局に行って、料金を更に払うのは馬鹿げているでしょう。それでも、診療所で薬剤師でないものから(薬剤師を雇用している診療所もありますが・・・)医師が監督せぬまま調剤された薬を服用するよりは、よほど安全なのではないでしょうか。
 私達調剤薬局の薬剤師の職務は、”医療事故を未然に防ぐ。”そんな仕事をしています。