調剤薬局がうっとうしい②・・・・医薬分業

前回、発言小町の”調剤薬局がうっとうしい”について、その”うっとうしい”理由を列挙しました。
   http://d.hatena.ne.jp/tomoworkaholic/20070525
 しかし、その発言が生じる理由の最大の原因は、一般の方々への医療制度や薬剤師の仕事に対する啓蒙活動不足です。
 とりわけ、「何故調剤薬局に行かなければならないのか。」という”医薬分業”への不理解が最大の原因だと考えられます。そこで、今回は医薬分業について述べてみたいと思います。

  • 医薬分業

 医師に”医師法”があるように、薬剤師にも”薬剤師法”があり、その第一条には「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他の薬事衛生を司る事によって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする。」とあります。そして、第十九条に”調剤権”として「薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。」とあるのですが、そこには但し書きがあって、曰く”医師もしくは歯科医師医師法第二十二条各号、歯科医師法第二十一条各号において自己の処方箋により自ら調剤する時は、この限りでない。”とあります。
 つまり、”調剤するのは薬剤師のみ”であると法に規定されており、これが医薬分業の根拠なのですが、医師法歯科医師法の特定の条件下での例外規定が、今日まで”診療所で薬がもらえた”理由なのです。では、医師法第二十二条・歯科医師法第二十一条が示す特定条件とは何なのでしょうか。これらの法には次のように記されています。
 「医師(歯科医師)は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する場合があると認められた場合には、患者又は現にその看護に当たっている者に対して処方箋を交付しなければならない。但し、次の各号に該当する場合においてはこの限りではない。

  1. 暗示的効果を期待する場合
  2. 処方箋交付が患者に不安を与え、その疾病の治療を困難にするおそれがある場合
  3. 症状の短時間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合
  4. 診断又は治療法の決定していない場合
  5. 治療上の応急処置として薬剤を投与する場合
  6. 安静を必要とする患者以外に薬剤の交付を受ける事ができる者がいない場合
  7. 覚せい剤を投与する場合
  8. 薬剤師が乗り組んでいない船舶内において、薬剤を投与する場合」

 この例外規定を担保に、長い間医薬分業は行われてきませんでした。しかし実際の理由は、基金に請求する金額と納入額との間に存在する所謂”薬価差益”でした。その差益が大きい時は当然医薬分業が行われず、今日のような差益がほとんど無い状態になって、やっと医薬分業が行われました。そういう意味で、当事者である患者をないがしろにした分業の推進が、医薬分業に対する無理解の主原因である事は否定できません。(・・・実は、政府の後発医薬品推進が進まないのも、国民をないがいしろにした推進政策が原因だと考えています。・・・)
 ではなぜ医薬分業が法的にも必要と考えられていたのでしょう。
 それは、”ひとには間違えることがある”からです。生きていく中で間違いを犯さない人など存在しません。それは、医師といえども同様で、多くの理由から誤った処方を選択する場合があります。それを、薬剤師や他の医療関係者の異なった目で監査する事で、過ちを防ぐ為医薬分業はあるのです。薬剤師が調剤する事で、処方の用量・併用薬や食事との相互作用・重複投与を防ぐ事がより可能になります。
 また、他にも医薬分業には国民が享受できる多くの利点があります。

  1. 患者が医薬品に対する服薬指導を薬剤師から受ける事で、服薬コンプライアンスがあがる。
  2. 処方箋交付により、処方内容が公開され、開かれた医療が進む。
  3. 医師が院内在庫を気にすることなく処方薬を選択できる事で、処方薬の範囲が広がり、治療に有益である。

 患者の皆さんが医薬分業による不満を語る裏で、気づかない利点が存在している事を感じて頂きたいと思います。