傾聴と非言語コミュニケーション

  • 薬剤師は何をしてくれる人か?

「調剤と情報」4月号に東京SP研究会の佐伯晴子さんが”薬剤師があこがれの職業になる日”という記事を書かれています。http://www.jiho.co.jp/mag/cho/index.html
(SPはSimmulated Patients:模擬患者の略で、医療面接の患者役を演じ、面接する医療者の言動で感じた事を伝える仕事です。)
 この中で、SPとして薬剤師の説明に際し、「服薬コンプライアンスを高める事に注意が行き過ぎて、薬が患者にどのように役立つのか、その薬を服む根拠が説明されないままに使い方ばかりが強調されている。」と感じると述べられています。また「薬剤師が医師の代理人なのか、患者である私の味方なのかわからない。」「薬剤師という専門家が、何を目的に、誰の為に、どんな事をしてくれるのかが見えてこない。」「わからない事は先生(医師)に聞いて下さい、とか、先生のご指示通りに服用してください、の発言からは、薬剤師の業務は、先生の指示を患者に守らせる事と感じられる。」とも述べられています。
 私達薬剤師は、はたして”先生(医師)の代理人”なのでしょうか。医師の処方された薬をキッチリ服用させる事だけが最も大事なのでしょうか。薬剤師の仕事は”何”に視点を置いてなされるべきなのでしょうか。
 薬剤師が”医療の担い手”である以上、守るべきは”いのち”です。そして”いのち”は”患者自身の選んだ生き方”であると私は思っています。そうである以上、向かうべき対象は”患者自身”であって、薬剤師は患者自身が抱える病気や薬に対する不安や疑問に共感し、解消するよう努める事が最も大事なのです。置くべき視点は、病態としての”疾患”ではなく、個々の患者の”病気”なのです。

  • 薬剤師の姿が見えるために

 患者様の”いのち”を最優先する為に、薬剤師は患者様と多くの対話をしなければなりません。その為には先ず”傾聴”する事です。そして”共感”する事です。そこには、実は言葉は要りません。ヒトの”想い”は非言語である”アイコンタクト”や”うなずき、相づち”の方がよく伝わります。患者様に対する”想い”は”言葉によらないもの”から伝わってゆくものなのです。(いわゆる”コーチング”でもこの事はよく説明されています。)
 対話を積み重ねて、薬剤師として患者様と向き合うこと、”生の声”を聞くこと、傍に寄り添う医療をすすめる事、その事が薬剤師が姿を見せる事になるのではないでしょうか。