電子薬歴

 薬局では、患者様のお薬の服用歴を残しています。患者様との対話の中で聞き取ったアレルギーや食事、また他に服用しているお薬(医療用、OTC)を記録として残す事で、お薬の相互作用や重複投与を未然に防ぎ、患者様の健康を守る事ができるからです。
 以前まではその記録を紙で残す事が殆どでしたが、最近はコンピューターで記録する電子薬歴が普及してきました。これは、患者様の抱える疾患やお薬に関する問題点(POS)を時系列で探ったり、その為の薬歴の書き方(SOAP形式)を実践するには非常に都合が良いからです。
実際、私の薬局で患者様の症例検討会を開く為の資料を作成しようとしたところ、5・6年前からの薬歴を調べて問題点・検査値を収集するには、人力では大変手間がかかりました。
 参考:症例検討会http://d.hatena.ne.jp/tomoworkaholic/20070705
そこで今回電子薬歴を導入する事にしました。電子薬歴導入には日本薬剤師会ガイドラインを作っています。
 薬剤服用歴(薬歴)の電子媒体による保存に関するガイドライン
 http://www.nichiyaku.or.jp/contents/yakureki/default.html
電子薬歴には以下の3つの基準が必要となります。
(1) 真正性 記録時間・記録者の明確化、上書き書き換えの禁止等
(2) 見読性 必要に応じて、容易な見読や印刷ができること等
(3) 保存性 法令に定める期間の保存、バックアップ等
どのメーカーもこの基準はクリアしなければなりません。
 電子薬歴を作っているメーカーには二つのタイプがあります。一つはレセプトコンピューターを作っているメーカー。もう一つは電子薬歴に特化して作っているメーカー。私どもの薬局ではEMレセプティーのレセコンを使っているので、EMレセプティーが提供している”Navity"という電子薬歴と、どのレセコンにも対応可能なハイブリッジが提供している”LiveDB"という電子薬歴を比較検討しました。
 EM”Navity"http://www.emsystems.co.jp/products/navity.html
ハイブリッジ”LiveDB":http://www2.hi-bridge.co.jp/index.html
 ”Navity"はレセプトコンピューターソフト”Recepty"と連動して動き、端末にもこの二つのソフトが常駐する為、レセプトコンピューターとしても動くという利点があります。つまりスタンドアロンではなく、クライアントサーバーになる訳です。従って、処方入力が速くできること・加算行為が投薬窓口の薬剤師が入力できる利点があります。勿論薬歴入力はSOAP形式が基本ですが、OTCや食品との相互作用についてチェックできない欠点があります。また、調剤行為をする為に使うには調剤支援データが出しにくい点もあります。
 逆に”LiveDB"はレセプトコンピュターとしては使えません。あくまで薬歴専用です。従って沢山の患者さんが来られた時には入力待ちという状況が生じます。しかし薬歴が持つ目的には非常に合致します。特に調剤には支援シートが提供される為、いわゆる患者様個々のオーダーメード調剤ができます。またOTCや食品との相互作用検索も可能ですし、スキャナーが装備されているのも利点です。
 それぞれに利点欠点はありますが、その薬局ごとの必要性に応じてお選びになったらよいのではと思います。
 PS:ちなみに私の薬局では”LiveDB"を選びました。