銀座のハチミツ

 7月1日(日)私用で東京に行ったのですが、そこで非常に面白い人たちに出会いました。彼らは、都会のど真ん中、銀座三丁目の紙パルプ協会ビルの11階で、なんとミツバチを10万匹も飼っているのです。
 初めは「なんとはた迷惑な。通行人がハチに刺されたらどうするのだろう。」とも思ったのですが、話を聞いていくうちにその行動と意図の小気味よさに楽しくなってきました。
銀座といえば都会のど真ん中、どう見ても養蜂には向かないだろう思っていたのですが、実際はそうでもないのです。というのはミツバチの活動半径は3km。銀座三丁目を中心に考えると、この中には皇居や浜離宮が含まれ、実に多種多様な花々が育っています。ミツバチが成育するには十分な花木が残っているのです。また、ミツバチは元来おとなしい性格で、自分や巣が危険だと感じない限りめったにヒトを刺さないそうです。
 養蜂といえば地方かなとも思うのですが、地方では他の農作物のために農薬が使われます。過去にはカメムシが大発生した時もあり、その時の農薬散布を浴びたミツバチは巣の周りで大量に死んでいた事もあるそうです。体に農薬を浴びたミツバチは巣に帰れません。農薬で巣全体が汚染されるからです。生きていても巣には帰れず、結果巣の周りで死に絶えたのです。
 また地方で養蜂をしている所にはクマがでます。このクマの出現の為に命を落とした養蜂家も沢山います。銀座には農薬はありません。クマも出ません。養蜂には銀座は結構いい場所なのかもしれません。
 銀座でミツバチを育てる”銀座ミツバチプロジェクト”で得られたハチミツは、”銀座のはちみつ”という名前で使用されています。文明堂では”銀座はちみつカステラ”、その他アンリシャルパンティエのケーキやBarのカクテルにも使用されています。注文から配達までわずか20分。まさに産地直送の”銀座のはちみつ”は多くのメディアにも取り上げられています。
 地方ではなく都会のど真ん中でミツバチを飼う、一般のヒト達が、皇居や浜離宮の花からハチミツを作って売り出す、普通では考えもしないその発想と行動に思わず拍手を送りたくなりました。
 「銀座ミツバチプロジェクト」http://www.gin-pachi.jp/
 翻ってみると、私達も常識に縛られて”できない”と諦めている事が多い気がします。例えばこの薬剤師の仕事でも、医療者の目からしか患者様を見ていないことが多いのかもしれません。自分が患者になった立場で仕事を見つめ直せば、まだまだできる事・しなければならない事は確かにあると感じます。”銀座ミツバチプロジェクト”は私の古い頭に喝をいれてくれた想いがします。