介護職員増員の必要性

 日本経済新聞7月23日に対のような記事が掲載されました。
厚労省推介護職員、最低40万人の増員必要計 

厚生労働省は、団塊世代の高齢化に伴う介護ニーズを賄うには、2014年までに介護職員などを40万―60万人増やす必要があるとの推計をまとめた。現状に比べ介護サービス従事者が4―6割増となる計算だ。ただ介護職員は離職率が高く、人材難が深刻。労働力人口が年々減るなかで人員を確保するには、外国人労働者の受け入れ拡大も含む抜本策が必要との指摘も出ている。
 要介護や要支援と認定されて介護保険サービスを受けている高齢者は、04年度時点で約410万人。厚労省の試算によると、団塊の世代が65歳以上になる14年度の要介護者は現状より大幅に増加。高齢者を対象に05年から始めた筋力トレーニングなど介護予防事業の効果があった場合で600万人に、効果がなければ640万人まで増える見通しを立てている。(07:01)

 朝日新聞7月26日にも同様の記事が掲載されています。

介護職員、今より40〜60万人必要 審議会試算2007年07月26日

 厚生労働省社会保障審議会福祉部会は26日、急速な高齢化などに伴い、2014年時点で必要な介護職員の数は、04年より40万〜60万人多い140万〜160万人との見通しを発表した。一方で、介護・福祉サービス分野では低賃金や超過勤務など労働環境が厳しく離職する人が多いため「質の高い人材を安定的に確保することが喫緊の課題」と指摘。適切な介護報酬の設定による給与水準の改善、労働時間の短縮、高齢者の活用などを提言している。

 この日の同部会で、93年につくった社会福祉分野の人材確保のための基本指針の見直し案をまとめた。厚労省は審議会からの答申を受け、8月中旬にも新指針をつくる方針だ。

 見直し案によると、75歳以上の高齢者は04年の約1110万人から14年には約1530万人に、介護保険制度の要介護、要支援認定者も約410万人から約640万人に増えると見込まれる。これに対応するには、介護職員も大幅増が必要とした。

 だが、福祉・介護サービス従事者の給与水準は全労働者平均より低いなど労働環境は厳しい。平均年収(05年調査)は全労働者453万円に対し、福祉施設介護員は男性315万円、女性281万円、ホームヘルパー女性は262万円。介護職員に訪問介護員を加えた離職率は20.2%(04年10月から1年間)で、全労働者の17.5%(05年1年間)を上回るなど、働き続けるのが難しい状況だ。

 見直し案は人材確保策として、(1)給与水準の実態を踏まえた適切な介護報酬設定など労働環境整備の推進(2)キャリアアップの仕組みの構築(3)高齢者など多様な人材の参画促進――などを挙げている。

 記事に掲載されているように、団塊の世代が高齢化する2014年には、今よりも要介護・要支援認定者が合計230万人増えるわけですから、必要な介護職員も増員されなければなりません。さらに、社会的入院の削減によって4千億の医療給付費の削減を図る為に、2011年までには療養病床が38万床から18万床に減少されるので、要介護者はさらに増えるものと思われます。記事にあるような40〜60万人の介護職員増員だけでよいのかというと無理があるのではないでしょうか。
 しかし、3Kと言われる訪問介護の仕事の大変さを思えば、量的な増員自体が無理だと感じられます。同時に無理な増員は質の低下も生み出します。また、費用についても前回の改定で単価を落としていますので、収入の確保という面では無理な仕事の配分が実際見られます。
 その中で、7月23日の日本経済新聞には高齢者向け賃貸住宅事業への医療法人の参入が解禁されたという記事が掲載されました。

高齢者向け賃貸住宅、民間病院の参入解禁・厚労省
 厚生労働省は民間病院を経営する医療法人に、高齢者向け住宅賃貸事業への参入を解禁する。入居者の安否を定期的に確認する見守りサービスの提供を条件に、不動産業の兼営を禁じた医療法上の規定を緩和。医師、看護師ら医療スタッフと連携を密にした高齢者向け住居を整備する。心身に不安を抱えがちな高齢者が安心して暮らせる場を増やし、団塊の世代の高齢化で高まる住居ニーズに備える。
 医療法人に兼営を認めるのは、バリアフリーで高齢世帯の入居を拒まない高齢者専用賃貸住宅高専賃)。
厚労省高専賃事業に参入する医療法人に、入居者の生活相談に応じたり、高齢者の容体急変に備えて定期的に安否を確認するなどの見守りサービスの継続的な提供を義務付ける。 (07:00)

 このような高齢者向け賃貸住宅が医療法人によって作れるようになれば、患者様の立場になれば安心して入居できるようになります。療養病床を減らすわけですから、それに替わるものとして厚生労働省が医療法人に設立を認可するのも当然でしょう。介護難民などが生じればそれだけで問題なのですから。
しかし、何故今まで医療法人にこのような事業を行う事を認めなかったのか、つまり患者様を一つの病院で囲い込む事をさせなかったか、その意義は考えなければなりません。これが行なわれれば、日本の医療における”フリーアクセス”という利点が無くなる可能性も秘めていると思われますし、患者様が医療を選ぶ選択権を阻害する可能性もあります。
 介護と医療、制度としてまたその財源の方式としては異なるものではありますが、社会保障としては車の両輪です。二つの制度を考えながらの舵取り政策を厚生労働省には勘案してほしいものです。