認知症…その1
在宅医療で高齢者の患者様と接していると、”物忘れが多い”事をよく感じます。しかし、”物忘れが多い”事が即、認知症である訳ではありません。また、認知症が全てアルツハイマー病である訳でもありません。では、認知症とはどういう状態を指すのでしょうか。わかりやすい本を例示しておきます。
参考文献:「知っておきたい認知症の基本」川畑信也著 集英社新書
認知症は以下のような病態を言います。
- 獲得した知的機能が何らかの理由で低下する事。
- その事で社会生活や家庭生活で支障をきたす様になる事。
- 意識障害がない事。
そして、その診断をするには”物忘れ”以外に
が一つ以上加わる事が必要となります。
つまり、認知症診断には上記の患者様への問診と、それ以外に日常生活を知る方(家族など)からの症状聴取、簡便な認知機能テスト(長谷川式)、脳の画像検査(CT,MRI)が必要になります。これら検査を行った上で病名を確定させます。
長谷川式簡易検査 http://www.akanekai.jp/hasemane.htm
また、これら以外の検査として、”脳SPECT検査”というのがあります。これは患者様に放射性医薬品を注射し、脳血流をSPECT装置で計測し画像化するもので、eZISという専門ソフトが必要になります。これにより認知症の原因疾患を探ることがよりできるようになりました。
脳SPECT検査 http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~crs/SPECTb.htm
認知症の原因疾患は、アルツハイマーだけではありません。このエントリーでは、アルツハイマー以外の疾患を提示してみます。
1)前頭側頭葉脳変圧症
65歳以前に発症し、ゆっくり進行し悪化します。他人の意見を聞かず、身勝手な行動や言動が多く、対人関係が破綻していきます。他人への共感や 温かみに欠けるのも特徴的です。
2)ピック病
他人を攻撃し、自己中心的で平気で嘘をつく、徘徊なども見受けられるそうです。
3)レピー小体型認知症
大脳皮質にレピー小体が広がり、認知症が見られるもの。認知障害が日によって良くなったり悪くなったりし、特に幻視・幻聴が繰り返されたり、パーキンソン症状が見られたりします。
4)クロイツフェルトーヤコブ病
40〜60才代で発症し、急速に認知障害が悪化します。運動障害や筋肉のこわばり・全身の不随意運動が見られます。
5)正常圧水頭正
CTやMRIで脳室の拡大がみられます。認知障害・歩行障害・尿失禁が見られます。
6)進行性核上性麻痺
パーキンソン症状が見受けられる他、人格・感情障害や眼球運動障害や歩行障害・嚥下困難も見受けられます。
次回はアルツハイマーについて記してみたいと思います。