映画「50/50」


 2011年12月初旬、前立腺がんの転移により一人の男性患者が亡くなられた。
 彼が気付いた時には、既に前立腺がんは骨にまで転移していた。
 そして彼はリビングウィルを書き、何も治療をせず生きていく事を選んだ。
 妻も、その子供たちも、その考えを尊重し、家族一緒に彼を支え続けた。

 痛みはさほどの事はなかった。
 緩和医療で使う麻薬さえ、ほとんど必要なかった。
 しかし、次第に食べられなくなった。
 時に輸血をしながら、少しずつ体力は衰えていった。

 最期は家族に向けてこう言ったという。
 「ああ、本当に疲れました。皆さん、先に逝かせて貰います。」と…


 ガンを自宅で迎える最期がそうであっても、実は元気な間はガン患者の生活は普通だ。


 私の友人は、大腸がん転移のステージ4にある。
 抗がん治療も副作用で昨年10月頃止めた。
 そのおかげで、髪の毛もしっかり生え始め、皮膚炎も治り、きれいな肌に変わった。
 「いたって快調だよ。マーカーの値は右肩上がりだけど。」
 笑いながら彼は言う。


 働く薬剤師にもガン治療中の者がいる。
 手術をし、今は化学療法を行っている。
 化学療法後の1週間は辛くて立っていられない。
 しかし、それ以外はいたって元気。
 スタッフも支えながら、薬局で働いている。


 映画「50/50」は、まさにそんな映画。
 5年生存率50%を、ギャンブルのかけ率から考えると、とてもラッキー等とジョークを飛ばしながら、コメディタッチでガン患者の”生きる”を描く。
 化学治療中のガン患者の友の死、”なぜ自分が”との怒り。
 それらを乗り越え、主人公は生きていく。

 煩わしかった母の行動、親友のガンをジョークにする態度。
 しかし、それらの中に、どれほど自分を思いやる心があるか。
 人はそうして人として大きくなり、優しくなる。


 こう言った映画ができてきた事が、今の世の中の救いなのかもしれないとふと思う。