タミフルと異常行動

先日来テレビや新聞などで、タミフル服用後の異常行動による自殺が報道されています。
これに対して厚生労働省は、自殺はタミフルによるものとは認定できない事、そしてその有効性・使用を引き続き認めています。
この温度差は何なのか。以下の参考文献を要約してそれをお話したいと思います。
非常に詳しい文献なので是非参考になさってください。
 インフルエンザ脳症http://hobab.fc2web.com/sub4-influenza-encephalopathy.htm
 インフルエンザ脳症ガイドラインhttp://www.tokyo-med.ac.jp/pediat/data/influenza-associated_encephalopathy.pdf

インフルエンザ脳症は、インフルエンザに伴う急性の意識障害と定義されます。
インフルエンザに罹患すると痙攣を伴いやすく、しばしば異常言動・異常行動も認められます。勿論、その他のHSES(出血性ショック脳症症候群)やライ症候群でもこれらの症状は認められますが、同様にインフルエンザ脳症の初期症状でもあることからその初期診断が重要となります。
つまり、異常行動はインフルエンザ脳症などの症状であって、タミフル服用の有無に左右されずに起こった可能性があるのです。
では、インフルエンザ脳症の発生機序は何なのかというと、それはまだ解明されていません。
但し、「高熱になったから起こる」や「インフルエンザウィルスが脳に侵入した」事は否定されています。(日本小児科学会雑誌101.1997)今現在では、インフルエンザ感染により炎症性サイトカインであるTNF-αや、インフルエンザウィルス若しくはインフルエンザウィルスの産生するNA(ノイラミニダーゼ)が血管内皮細胞障害を強く引き起こし、血小板凝集を促進させてインフルエンザ脳症を引き起こしている可能性が指摘されています。
もしNAが引きこしているなら、タミフルはNA阻害薬ですから、逆にインフルエンザ脳症を防ぐ薬という事になります。

これはNPO法人「医薬ビジランスセンター」浜六郎医師が、日本小児感染症学会でタミフルによる異常行動を発表した事からマスコミが取り上げ始めました。
氏は動物実験で、タミフルが赤ちゃんラットの脳に成人ラットに比べ3000倍蓄積された事をデータとして発表なさっています。
しかし、赤ちゃんラットなら血液脳関門(BBB)など未熟なはずで、脳に移行しやすいのは当たり前のような気がします。これが証拠というのは疑問です。

  • 今後

タミフルは、日本において世界の70%超の使用がなされています。多すぎる感はしますが、それが即異常行動の原因だという報道のあり方には疑問を感じます。
異常行動の原因はタミフルかもしれないし、インフルエンザかもしれない。今わかっていることを正確に報道するする事がマスコミのあり方なのではないでしょうか。」
正確なデータと知識を持った取材・報道が望まれます。

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