医師会の活動と薬剤師会

 3月19日の朝日新聞日本医師会の意見広告が掲載されました。
   意見広告http://www.med.or.jp/etc/iken/koukoku.pdf
 要約すると

  1. 地域の産科が閉鎖に追い込まれている為に、将来「お産難民」が50万人発生する可能性がある事。
  2. 小児科医が不足している為、休日夜間の緊急外来ができなくなっている事。
  3. 地方と都市部での医師数の格差と国際的な日本の医師不足
  4. 平成24年3月までに療養病床が38万床から15万床に削減される事で医療・介護難民が6万人発生する事。

となります。
 実はその4日前に、日本医師会諮問委員会は上記の意見広告で取り上げた問題への対応策として、「臨床研究を終えた若い医師に僻地などでの勤務の義務化・産科小児科など医師が不足する診療科への勤務」などを提案する中間報告書をまとめ、医師会で了承を受けた後厚生労働省に政策提言するとしています。
 更に、日本医師会組織内の日本医学会は、3月29日「日本の医療の現状」についての中間報告をまとめ公表しています。この中で、一般市民と医療者の意識調査を行い、特に「治療の選択に患者の意見や希望が生かされているか。」では、医師76%が「十分」「まずまず生かされている」と答えているのに対し、一般市民56%・医師以外の医療者55%が「生かされていない」と答え、双方の意識にかなりのずれがあることを自ら公表しています。(朝日新聞3月30日掲載)
医師自らが今の医療の現状・意識のずれなどを一般の方にきちんと公表し(良い面も悪い面も)、さらにより良き医療を目指す為の政策提言を行う姿は、一般の方からは好ましいものと映るでしょうし、常にこういった一般の方々に話しかける姿が無ければ、医療者と患者の間のギャップはますます乖離し、あなたまかせの医療が蔓延る事になってしまいます。
 日本医師会は1916年「大日本医師会」として誕生し、1947年に「第1回日本医師会代議員会」が開催されました。現在その組織内には、学術団体の性格を持つ「日本医学会」を持つ他、医療政策のシンクタンクとして「日本医師会総合政策研究機構(日医総研)」が設立されており、独自の医療政策立案を行っています。また研究助成金や医療研究の促進事業なども行っており、幅広く日本の医療を考えていることが推察できますし、ホームページを見ても一般の方と語り合おうという姿勢がわかります。勿論、日本医師会は利益団体です。良い面も持っているし、悪い面も持っています。公表できない事案もあることは存じています。しかし、伝えようという行為が無ければ誰にも何も伝わりません。一般の方と共に医療をより良いものにしたいという思いを伝えている行為、それ自体で評価する必要があると思うのです。
日本医師会http://www.med.or.jp
   日本医師会総合政策研究機構http://www.jmari.med.or.jp
 翻って日本薬剤師会のHPを見て下さい。
   日本薬剤師会http://www.nichiyaku.or.jp/
どうですか。どれだけ一般の方に語りかけているでしょう。何をどう説明しているでしょう。医療の世界で「薬剤師は顔が見えない」といわれる所以はこんなところにあるのではないでしょうか。
 来る3月31日から4月8日まで、日本医学会総会が大阪で行われます。一般の方には、大阪城ホールで「EXPO2007」という企画展が開催され、4月1日は「くすりのはてな?親子でチャレンジ、くすり博士は君だ!」というイベントが行われます。
 薬剤師として本来私達が行わなければならない”くすり”のイベントが、医師会によって行われるのです。薬剤師全体に対する内向きの仕事も勿論大事です。しかし、一般の方に対する外向きの広報活動も等しく行わなければ、「薬剤師は何をやっているのかわからない。」「医師に薬を渡してもらったほうが良い」等の発言はいつまで経っても消える事はありません。
 「新しいお薬はここまで開発中です。」でも「タミフルはこんなお薬です。」でも構いません。一般の方の身近にあるお薬の話から薬剤師の仕事を伝える事が大事な事に思えます。