副作用報告

今私の手元に”ジェイゾロフト市販後調査結果のお知らせ”という書類があります。これは、昨年7月7日に発売された抗鬱薬SSRIジェイゾロフト”の発売後半年間に集められた副作用の報告書です。
一般に新医薬品が発売されると、それまで臨床試験を受けて医薬品として承認されたとはいえ、使用される対象者が非常に多くなる為、さらに有効性と安全性についての検討が必要となります。
そこで厚生労働省は、副作用・感染症報告制度として、①企業報告制度②医薬品・医療機器安全性情報報告制度③WHO国際医薬品モニタリング制度の3つについて報告を義務付けています。
薬局や診療所などの医療機関では、この②医薬品・医療機器安全性情報報告制度が義務付けられ、処方・投薬後の患者様からの副作用を報告しなければなりません。今手元にあるこの書類もこうした報告を集計したものであり、これによって添付文書も改訂され、適正な医薬品の使用法が築き上げられていきます。
昨日、タミフルの副作用報告が出されました。
http://www.asahi.com/special/070320/TKY200704040313.html
異常行動を起こした患者数が1079件の副作用中128例(11.8%)だそうです。
また、精神・神経症状の副作用は1800件中280例(15.5%)だそうです。
http://www.asahi.com/special/070320/TKY200703240363.html
さてここに、持続性ARB/利尿薬プレミネントのインタビューフォームがあります。副作用の精神神経症状は89件中23例(25.8%)です。精神神経症状の副作用内容が朝日新聞には詳細に掲載されていませんが、単純比較するとどちらに精神神経症状の副作用が多いかはお分かりになるでしょう。
”薬効が異なるものを単純比較する事には無理がある”という意見もあるでしょう。その通りです。しかし、使用した患者数も書かず、ただ単純に副作用報告が多いと記事にするのにも無理は無いでしょうか。また、副作用の内容にも精査が必要です。
更に、抗コレステロール薬のスタチンのように、同じ薬効でも成分が異なる事で副作用報告の数が異なるものもあります。抗インフルエンザ薬のタミフルも他のリレンザシンメトレルと比較する必要があります。
(余談ですが、同じ成分でも後発医薬品と先発品で異なる副作用が生じるものもあります。おそらく添加剤の違いによるものでしょう。)
異常行動については、インフルエンザでタミフルを服用せずに異常行動を起こした事例との比較検討が必要です。しかし、先に副作用報告制度について述べましたが、薬を飲まずに異常行動を起こした事例の報告制度は義務化されていません。
つまり、比較検討は難しいことになります。
このように、副作用を考えるには、副作用の内容や機序を含め多くの事を考慮しなければなりません。ニュースや新聞で報道されるのは大事なことです。しかし、タミフルに限らず、目先の数字や事象を羅列するだけの報道や事件の秘匿はいかがなものでしょうか。例えば、タミフルを服用せずに異常行動をとられた福岡と横浜の事例の記載も必要ではありませんか。他の薬剤で異常行動が生じた事例との比較も必要でしょう。
今求められるのは正確な報道と、考える為の数多くの比較データの公表、そして私達自身で考える事です。
更なる被害を生じさせない為にも、私見と思われる報道のあり方には疑問を感じます。