世界を変える人たち

”陽子線による癌治療法が注目を浴びている”という記事が朝日新聞(3月26日)に掲載されました。
勿論今までも癌治療法として放射線治療はありました。しかし、一般には透過性の高い電子線(X線γ線)が主で、粒子線と呼ばれる陽子線の利用は少なかったのです。全国でも陽子線医療施設は現在9箇所しかありません。ただ陽子線は電子線に比べてその深度をコントロールできる為、癌組織以外への侵襲が少なく、副作用が起こりにくい利点があります。
しかし、この治療は費用が非常に高く保険が利かない為、現在高度先進医療として混合診療が認められています。
   参考:放射線治療http://ganjoho.ncc.go.jp/pub/med_info/treatment/010706.html

健康保険法では本来、保険の利く治療と利かない治療が混在する場合、その治療費は全額自己負担(保険は利かない)となります。つまり混合診療は禁止されています。これは”国民皆保険制度”をとる日本で、良い治療が金持ちしか出来ないという弊害を取り除き、”医療の公平性”を維持する為にとられています。
   参考「混合診療ってなに?」http://www.med.or.jp/nichikara/kongouqa/index.html
しかし、2004年11月混合診療全面解禁を求める「規制改革・民間開放推進会議」と厚生労働省の間で、特定療養費の拡充という形で一部混合医療が認められました。この内容が、「特定承認保険医療機関」における「特定の高度先進医療」部分は自己負担で、その他の基礎部分は保険適応を行なうというものです。
これを上記の”陽子線治療”を例にとると、一部は保険が利くものの、陽子線治療にかかる自己負担部分として約300万円もの費用がかかることになります。。

  • 医療制度として考えてみる

医療の値段―診療報酬と政治 (岩波新書)「医療の値段」結城康弘著(岩波新書
著書「医療の値段」のなかで結城氏はこう述べられています。
「もし、混合診療の全面解禁が実施されれば、命の選択が経済的負担能力の有無によることが更に加速されるであろう。しかも、医療現場での最先端医療技術の使用判断が、医師と患者のみに委ねられることになる。そうなれば経済的に余裕のある患者は、当然のように最先端医療技術を、藁をも摑む思いで利用するであろう。」
より良い医療を受けたいと願う気持ちは多くの人たちに共通の感情です。しかし、現実には起こってはいますが、富の有無が命にまで影響する世の中は、健全な状態とはいえません。TVや雑誌で取り上げられる”セレブ”礼讃の下品さが、命にまで関与する事は許される事ではありません。
多くのお金がかかる高度先進医療。それを必要としても払えない人たちに、我々はどのような対策を講じればよいのでしょうか。

  • 世界を変える人たち

世界を変える人たち―社会起業家たちの勇気とアイデアの力「世界を変える人たち」デービッド・ボーンステイン著(ダイヤモンド社)
この本は社会企業家たちの話です。社会企業家とは「社会の重要な問題を解決に導く為に立ち上がった人たち」といえばよいかもしれません。例えば、インドでストリートチルドレンを守る為に24時間支援電話を作った人、ハンガリーデ障害者の為に夢の家を作った人、ブラジルでスラム街の子を病気から守る施設を作った人、こういった人たちの話です。
彼らは、貧しさや障害を持った人たちを、国家システムとは別の切り口で助け支えるシステムを作った人たちです。
わが国でも、重度肝障害や心臓障害で高度先進医療を必要とする子供達がいます。今は資金を募金の形で集めていますが、こういった問題に対してファンドを立ち上げればどうなるでしょう。もっとたくさんの子供達が救えるかもしれません。
医療を必要としている人に平等に与えられるシステムを作ること、その為に先ず自分に何が出来るのか、私の中で手探りの作業は続いています。