-世界での使用状況

わが国の医療費は、平成14年度で31兆1240億円(国民一人当たり24万2000円)、その内薬剤費が占める比率は約21%で6兆5331億円です。
また、わが国の老人医療費は平成13年度では総額11兆6560億円と、国民医療費の37.2%を占め、老人一人当たりの医療費は75万7000円と、国民一人当たりの医療費の約3.1倍です。

後発医薬品のシェアは平成16年の数量ベースで16.8%、金額ベースで5.2%でした。(医薬工業協議会掲載データ)
これに対し、欧米では、医療費抑制の為に後発医薬品を率先して使用しており、平成16年では数量ベースで、アメリカ53.0%(金額ベース8%)、イギリス55.4%、ドイツ41.1%と日本と比較すると大きな開きがあります。
来る超高齢社会ではこの医療費を抑制する事が最重要課題であり、厚生労働省後発医薬品使用推進策もその為に行われ、欧米諸国並みに使用されるよう対策が進められています。
しかし、欧米諸国とわが国では医療政策に大きな違いがあります。その違いを抜きにして後発医薬品推進は図れません。その違いを述べてみたいと思います。
1)アメリ
まず、わが国の皆保険制度と違い、老人や一部の低所得者以外は公的保険を持っていません。個別に民間の医療保険(マネジドケア)に加入しています。その為に、保険によっては使用する薬剤に制限があったり、治療する病院も指定されます。
医薬品の価格は、製薬企業による自由価格制であり(先発・後発医薬品に限らず)、購入者毎の交渉で決定します。つまり、買い手側によって価格がバラバラなのです。ここに、保険で医薬品の使用制限をする意味があります。
後発品の価格は、複数の後発品が存在する場合先発品の5〜10%の為、後発品が販売されると急速に市場が膨れ、僅か1・2ヶ月で市場の80〜90%を占めるといわれています。
また、薬剤師による代替調剤が認められています。これは、医師が処方箋に先発品の名前を書こうとも、処方箋を受け取った薬局薬剤師によって、他の後発医薬品に変えることができると言うものです。
民間医療保険会社も後発医薬品の使用を奨励しています。
しかし、こういった後発医薬品推進も一変に変わったものではありません。
実際には、1960年度から政府の後発医薬品使用拡大意識が高まり、後発医薬品メーカーも消費者啓蒙運動を活発化させました。(まるで、今の日本の現状に似ていますね。)
しかし、当時はアメリカでも先発品志向が強く、また後発品の安全性や有効性にも不明な点が多かった為、使用は進みませんでした。そこで1972年、エドワード・ケネディーが委員長となる公聴会により、後発医薬品の先発品との生物学的同等性や品質について議論が進められました。
1980年代にはFDA厚生労働省にあたる)により、後発医薬品選定の為の資料”オレンジブック”が発行され、後発医薬品使用推進を奨励し、今も続けられています。
こういった国民に後発医薬品を啓蒙・奨励し続けた30年余の歴史の中に、今のシェア50%はあります。
2)イギリス
先発品の価格は、医薬品価格規制制度の下、製薬企業の自由価格ですが、製薬企業の利益に対する規制制度があるため、過剰利益を得られるような価格にはできないようになっています。
後発品は、基本的に企業の自由価格制度を認めつつ、「カテゴリーM」による償還価格が決められ、薬価の高騰を抑制しています。さらに、市場原理による企業間競争を促して、後発品の価格の低下を図っています。
イギリスでは、医学教育の中で処方薬を商品名ではなく一般名(成分名)で書く様指導しており、一般名処方比率は70%以上です。また、新薬使用には明確な理由を挙げる事が義務化されています。
更に、医師不足のため薬剤師の薬物療法への積極的関与が明確化されているため、処方薬を後発品にしやすい環境があります。
3)ドイツ
ドイツは制度によって医療費を抑制し、後発品の使用の一般化を図っています。
1989年、政府は参照薬価制度を導入しました。これは、医療費の中の一定価格までは保険で支払われるが、それを上回る薬剤費は患者の自己負担とするというものです。
1993年には、総枠予算制度が導入され、健康保険組合が支払う医療費・薬剤費について上限を設けられました。万一予算を超過した場合、医師・製薬会社・疾病金庫の連帯負担という事になっています。
さらに、2002年代替調剤が導入されました。
また、薬剤師には社会法典における義務規定として、経済的医薬品を医師の処方に関わらず販売しなければならない事になっています。
薬局の利益も、2004年の改正によって、後発品を販売しても先発品を販売しても同額の利益を確保できるようになりました。
これらの制度によって後発品のシェアが高く維持できるようになっているのです。