-後発医薬品使用推進の為にすべき事

4月22日読売新聞に「厚生労働省:処方箋における医薬品、後発医薬品が前提。」
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070422ik01.htm
という記事が出ました。
後発医薬品使用推進の目的は、
 ①国の財政における医療費の削減
 ②患者様の意志に基づく医療費の一部負担金の削減
です。
2025年には超高齢社会を迎えるわが国の経済政策として、医療費の削減は必要でしょうし、患者様の権利として、患者負担金を減らす事も理解できます。
しかし、その為とはいえ昨年4月に行った施策、つまり国として後発医薬品に対するなんの国民的啓蒙活動もせず、いきなりメーカーには「お薬代が半分になります。」というコマーシャルをさせ、医療機関には「後発品に変更したら2点、10点のインセンティブを与える」という施策はないでしょう。
そして、本年1月末の厚生労働省報告”「後発医薬品への変更可」処方箋発行が全体の17.1%、その内薬局での実際の変更率5.7%”という結果を受けて、上記のような施策を考えるのは、我々に”無理から推進させようとしている。”という感を与えても仕方ないと思います。
諸外国の取り組みでもわかるように、後発医薬品使用推進は10年・20年のスパーンで考える問題です。短慮でなされた施策には無理が生じるのは自明の事です。

では、どうすれば使用は促進されるでしょう。
まず第一は後発医薬品は先発品とは同じものではない」という事を明確にし、それでも臨床的有効性に大きな違いは無い事を、基準を明確にした資料を基に国民に伝える事でしょう。(これは、アメリカのFDAの後発品に対する認識と同じものです。また、徐放性製剤や注射剤など先発品と治療的有効性に違いがあるものもある事を伝えなければなりません。)
その上で、後発品を使った場合の財政的利点・国民一人一人の経済的利点を啓蒙する事です。

現実的には、医師が後発医薬品を使いにくい最大の理由は、「後発医薬品は果たして有害事象の発現も含めて、臨床効果で先発品と同等の効果を示すか。」という点です。
それには、まず第三者的機関(現行の医薬品医療機器総合機構で構いません)が、現在提出を求めている溶出試験や生物的同等性試験よりも、さらに具体的な基準・細則を作る。そして、そこで先発品企業・後発品企業に関わらず全社的検査を行う。
その検査結果を「日本版オレンジブック」として国が公表し、信頼性に対して各製品にランク付けを行う。そのランクを下に薬価を作成すればよいのではないでしょうか
。(アメリカのオレンジブックはA,Bの2等級のランク付けを行っています。また、日本の後発品の薬価は、発売時は先発品薬価の7掛け、その後市販調査によって薬価は変動していきます。)
そうすれば、後発品の品質に対する担保を国が行うのですから、医師も処方しやすくなりますし、また薬価の低い薬を所望されている患者様には、選定に伴う品質の保証も低くなる事を証明できます。
次に、添付文書の製薬会社記入事項として、添加物を全品記入する事とする。但し、特許等の理由で記載しないものがあるなら、こういった添加物は記載していないと明記することも必要です。現行では、自主基準の為特許で守られているもの等に対する記載を免除している為、何が入っているのか実際にはわかりません。添加物によってはアレルギーを持つ患者様の事を思えば、記載はなされるべきでしょう。
そして、医学教育の中で、一般名処方を導入する。諸外国では、既に一般名処方や代替調剤は導入されています。同じ成分なのに名前の異なる医薬品ばかり増えたって、仕方ないでしょう。外国と日本では名前の異なる商品は数知れずあります。”新薬の開発を各国協調で行い、画期的新薬には高い薬価をつける”という政策を打ち出している厚生労働省なら、協調の意味からも導入されてしかるべきと思います。但し、治療上の理由である医薬品を使いたいという時のみ、商品名を記載する事にすればよいのではないでしょうか。

後発医薬品推進は、ある意味薬局薬剤師の対応にかかっており、対応の有無は医薬分業の是非論にも関係する。」という厚生労働省保険局医療課薬剤管理官:磯部総一郎氏の意見は、ある意味正しいと思われます。(日経DI4月号記事)
そのためにも、後発品選定に関する基準に沿ったデータの作成と、国民への啓蒙活動は必須なのではないでしょうか。