リレンザと異常行動

5月15日朝日新聞に”タミフル以外の異常行動”についての記事が掲載されました。
http://www.asahi.com/life/update/0514/TKY200705140393.html
記事によると、厚生労働省(14日発表)は、タミフル以外のインフルエンザ治療薬:リレンザ(ザナミビル)で、2000年販売開始より40例の副作用報告があり、その内10例に異常行動が生じ、8例は10台であったと報告しているそうです。
また同様に、アマンタジン(シンメトレル)では、98年から67例の副作用報告があり、内異常行動は6例、2例の死亡が認められたそうです。
副作用報告は、医薬品医療機器安全性情報報告制度で医療機関に義務付けられたもので、医療機関で処方・調剤した事例のうち、副作用が出現した事例を厚生労働省医薬食品局安全対策課に報告するものです。
副作用報告(http://d.hatena.ne.jp/tomoworkaholic/20070405#1175872036
この場合、発生した理由は当然書かれません。併用薬全てを明記します。
とすると、今回の異常行動の発生した理由は何なのでしょうか。いくつかの理由が考えられます。
1)リレンザシンメトレル各々の薬自体に異常行動を引き起こす原因があった。
リレンザの添付文書には異常行動の記載はありませんが、シンメトレルにはせん妄などの記載があります。)
2)インフルエンザそのものに、異常行動を引き起こす要因がある。
3)今回の事例において併用薬があったなら、それらとの相互作用が生じた。
(これは国立病院機構三重病院の中野医師によって、報道ステーションで報道されたものです。)
http://d.hatena.ne.jp/tomoworkaholic/20070316
本年2月末より”タミフルによる異常行動”について、報道機関でタミフル自体が引き起こす異常行動についての報道がなされました。浜六郎医師の発言も報道に火をつけました。その時、浜医師は「リレンザは異常行動を起こさない。」と、発言されました。
しかし、今回こうしてリレンザによる異常行動報告は出てきました。
各薬が引き起こすものなのか、インフルエンザ自体が異常行動を引き起こすものなのかは、厚労省作業部会のこれからの調査を待たねばなりません。
しかし、少なくとも、タミフルだけが異常行動の原因であるということは無くなりました。そして、詳しい調査も待たずに”タミフルだけに問題がある”とか、”調査委員会に製薬企業から金が渡ったからインフルエンザ脳症が原因と厚労省はいっている”などの報道の正当性も無くなったと思います。。
いのちをめぐる報道に、片側からしか見ない表現はあってはならないことで、そこには倫理観や公正性は認められないのです。
今週号のAERAに、タミフルについての”併用薬との相互作用”や”タミフル耐性ウィルス出現”についての記事があります。また、パンデミックに対するタミフル濫用の問題点など非常に重要な報告がなされています。
報道に携わる方々には、このような記事を書いて頂きたいと思います。
また、私達医療人は、こういった抗インフルエンザ薬に異常行動を引き起こす原因がある事を認識し、耐性ウィルスを作らない為にも、必要以上の使用を避けるようにすべきだと思います。