訪問介護

 朝日新聞7月13日夕刊の”窓(論説委員室から)”に「立て!心ある者達よ」という記事が掲載されました。この中にはコムスンの生い立ちと訪問介護の事が書かれています。
 ”川名紀美”署名入り記事によると、コムスンは13年前今は亡き榎本憲一氏が、最期の時まで人が安心して自宅で暮らせるようにと、福岡県で全国初の24時間巡回型訪問介護サービスの会社を作ったのが始まりだそうです。そして、訪問介護は施設と違って人手と事務所があればいい、大手の営利企業にも小さなNPOにも支払われる介護報酬は同額で、地域に根付いた信頼こそがものをいう仕事だ、だからこそ今立ち上がれと書かれています。
 しかし同じ朝日新聞7月9日”清川卓史”署名記事では「消耗する介護の現場・・・命を支える重労働、でも低賃金、雇用も不安定」という題名で、実際の介護の現場の第一線を支える人の暮らしが書かれています。
日経新聞7月14日「大機小機」には”民間介護事業を考える”という記事が掲載され、介護保険制度設計の誤りを指摘し、民間企業の苦しい経営を報告しています。
 介護にかかる費用は2000年に3.6兆円だったものが2007年には7.4兆円と倍増しています。これを半分ずつ税金と保険料が負担しています。税金は国が1/2,都道府県と市町村が1/4ずつ負担しています。倍増する費用に、当初保険料は65歳以上で平均2900円だったものが今は4000円になっています。しかし、保険料をこのまま引き上げ続ける訳にもいきません。当然費用、つまり介護報酬が下げられる事になります。また、医療費削減の為、2011年には療養病床が38万床から18万床に減らされ介護難民が発生します。厚生労働省はこの受け入れ先として新型老人保健施設を作り、報酬単価を優遇する方針を固めています。介護において施設介護を目指す企業が多いのはこのためです。しかし総額の介護費用を増やす事はできません。畢竟、訪問介護報酬は下げられる事になります。
 私が在宅医療に行く高齢者のお宅にもヘルパーさんが来られています。車を与えられている方はいいですが、自転車の方は雨の日でもカッパを着て決まった時間に来られています。ご飯を作る、掃除をする、家計簿をつける、家事介護で喜ばれる患者様にも、家庭に入られることで、お金が・株券が盗まれたと話される方がいます。そんな意欲が萎える事も現場では多々あります。
 訪問介護に携わる人たちの平均勤務年数は4.2年です。給与は常勤の介護福祉士で月額23万円、非常勤で8.1万円、常勤のヘルパーで20万円、非常勤で6.5万円(NHK報道による)、介護を必要とする人たちの命と健康に携わる責任の大きい仕事なのにこの低賃金なのです。
 どんなに志が高くても、労働に見合う賃金が提供されなければ、雇用が安定しなければ、勤務する人間は疲弊するものなのです。心ある事業家はいつも勤務する人たちの為に、希望の持てる将来と賃金を提供できるビジネスモデルを考えた上で起業します。現場を認識せず理想だけをおっての起業は、ややもすればそこで働く人たちを不幸にします。
 ”川名紀美”記者様、どうか現場を知り、より良くする提案を上げて心ある人を鼓舞しましょう。机上の空論、裏づけの無い勇気付けは更に多くの哀しみを生みだしかねないのですから・・・・・
 日経ネットPLUS「イエコノミー」には”さよならコムスン”という題の記事が掲載されています。ここには介護を自分達の手でつくりあげる人たちが描かれています。深い取材に敬意を表します。
 日経ネットPLUS(https://netplus.nikkei.co.jp)