後発医薬品推進の為に

 先日、”ファーマシューティカルケアの実践〜薬物治療における新しい薬剤師の役割”という題で、聖マリアンナ医科大学病院薬剤部部長:増原慶壮氏の講演を聞きました。増原氏はかねてより有名なジェネリック医薬品推進派の論客で、この日も積極的に自らの病院例を使って後発医薬品推進の話を進められました。
 実際お話を聞くと氏の論点は明確です。即ち後発医薬品厚生労働省の認可した医薬品であり、先発品の特許の切れた同成分医薬品である。同成分同薬効は当然であるから毒性試験や臨床試験は必要なく、溶出試験と生物学的同等性試験で先発品と比較して劣る事がなければ、後発品が先発品と比較して効果が落ちる事は論理的に無い。万が一、効果が異なっているのなら、それはメーカーの責任であり、認可した厚労省の責任である。薬剤師の責任は何も無い。逆に薬剤師には医薬品を供給する義務がある。厚労省後発医薬品を積極的に使うよう指導しているのなら、そのように薬局が活動するのは薬局薬剤師の義務であるというものです。
 主要国のジェネリック医薬品シェア(2004年度医薬工業協議会調べ)は、金額ベースで米国・独逸・英国が約50%ですが、仏国は12%、日本は16%です。ところが、仏国はその後代替調剤を許可し、薬局に後発医薬品使用に対しインセンティブを与えた為、2年後には後発医薬品シェアが39%になりました。現在、代替調剤・一般名処方ともすすめているのが米国・独国、全て一般名処方が英国、代替調剤が仏国、日本は医師の許可した物のみ変更可という状況です。
 つまり、後発医薬品のシェアを厚労省のいう平成24年に30%する為の施策は”一般名処方”か”代替調剤”であり、薬剤師は積極的にこれらに関与しすすめていかなければならないと述べられていました。
 実際聖マリアンナ医科大学病院では、院内は全てジェネリック院外処方箋全てが一般名で記載されており、地元の川崎市薬剤師会も一般名処方に協力されています。一般名処方である以上、どのジェネリックを使おうと病院は一切文句は言わないそうです。
 ジェネリックの効果を疑問視するのに、添加剤が異なる事を私もよく言います。しかし、それなら例えばハルナールD錠はどうなのか、先発品ハルナールカプセルと異なる添加剤を使い、あまつさえ基準となる先発品そのものも製造しなくなった。そのことは薬剤師としてどう考えるのかと増原氏は問いかけます。また、MRが来ない・資料提供が少ないという点には、MRは殆どが今は薬剤師ではない、そんな者に薬剤師が何故会いたいのか、4年間の勉強は何だったのか、資料など自分で探すのだ、それが薬剤師だろうと語られました。
 同意するか、疑問視するかは別にして、増原氏の発言に考えさせられた部分はありました。

  • 感心した点

 病院を全て一般名処方にした努力には敬意を表します。医師が処方を商品名で入力しても、一般名に変換するソフトを作って対応したそうです。このソフトが標準化すれば、今後一般名処方が増える事になるでしょう。
 また、薬局がどのジェネリックを使おうと一切関与しなかったという態度には、医療機関のあり方として優れた姿勢だと感じます。

  • 問題視する点

 本当にジェネリックは先発と同等なのでしょうか。実際私の薬局の患者様で、ご要望どおりジェネリックに変えた後、次回先発品に戻った事例があります。NSAIDSの方と、Ca拮抗剤の方でした。理由は、痛みがすぐにひかない、血圧が逆に上がったというものです。これをプラシーボで説明できるでしょうか。甚だ疑問です。
 次に入院された方には全てジェネリックが使用されます。それで問題が起こった事は”ただの一度”も”絶対”無いそうです。医療の世界で”絶対ない”とか”皆無”など、私は無いと思っています。いえ、普通の世界でも”絶対無い”などありえないのではないでしょうか。そんな言葉を疑問視するのは私だけではないと思います。増原氏の言葉を全ては納得できない点は、実はそこらあたりなのかもしれません。

 しかし、「薬剤師が自ら考え、行動しなければならない。」という点は大賛成です。それこそが、薬剤師の姿を見せる事に繋がるのですから。