”こうのとりのゆりかご”の意義

 安倍首相をはじめ政府が「美しくない。捨て子を助長する。」と評価をしていない”こうのとりのゆりかご”が、少しずつその意義を認められてきているようです。以下はm3.comに載っていた記事です。

赤ちゃんポスト引き取り 「緊急避難」発揮と評価

記事:毎日新聞社
提供:毎日新聞社

【2007年8月23日】
NEWSクリック:赤ちゃんポスト引き取り 「緊急避難」発揮と評価

 ◇国は慎重姿勢、崩さず

 熊本市の慈恵病院が運用する「赤ちゃんポストこうのとりのゆりかご)」で今月、預けられた赤ちゃんを“両親”が引き取っていたことが分かり「緊急避難としての施設の役割が発揮された」と評価の声が上がっている。5月の開設から既に6人が預けられ「捨て子を助長する」との懸念が高まりそうな気配だったが、今回の事例で施設の意義が改めて見直されそうだ。ただ、国などは評価に慎重な姿勢を示している。【山田宏太郎、谷本仁美】

 関係者によると、今月8日、施設に生後約1カ月の男児が預けられたが、17日に両親とみられる男女が引き取った。男女はさまざまな事情からいったんは「預けた方が子供のため」と考えたが、やはり親子の情は厚く「手放せない」と、考え直したらしい。

 病院と男女をつないだのは手紙とメールだった。病院はゆりかごに「引き取ることができるようになったら連絡してほしい」とのメッセージを記した手紙をポスト内に置いている。男女はその手紙を持ち帰った上で、病院のホームページなどを通じ、メールで連絡を取ってきたらしい。このメールのやり取りの間に、男女の思いが次第に変わったようだ。

 赤ちゃんポストを研究しているノートルダム清心女子大の阪本恭子講師は「今回のケースはポスト利用の理想的な形。ドイツの施設でも3割の親が名乗り出ている」と話す。妊娠した未婚女性の支援などに取り組む円ブリオ基金センターも「子供の命が守られ、親子関係も戻り、良かった」と評価した。

 一方、元大阪市中央児童相談所長の津崎哲郎花園大教授は「両親が一時的に養育が難しい事情があって預けたとすれば、(赤ちゃんポストに預けるのでなく)乳児院に一時的に預ける制度もある。親元に戻った後も家族が問題を抱えているなら、病院と行政が連携して家族をフォローする必要がある」と提言した。

 厚生労働省家庭福祉課の担当者は「子供は親が養育するのが一番望ましい」「子供を(ポストに)預けるということはあってはならず、行政などに相談してほしい」と従来の考えを繰り返し、運用状況の検証などにも消極的だ。

 確かに政府の言うように、子供を養育するのは両親が一番望ましいものです。しかし、それがいろいろな理由で出来ない両親がいるのもまた悲しい現実です。
 この夏、所謂”捨て子”ではありませんが、母親の精神的疾患の為に子供を学校にも登校させない・夏でも冬の格好をさせている子供を、児童福祉相談所が母親から引き離した事例や、両親の部屋での清掃能力の無さから”ごみため”のような家で生活する兄弟をTVで報道していました。厚労省のいう様に、養育できないなら”乳児院”に預けるという策もあるのでしょう。しかし、行政が全てをやってくれるわけではありません。”小さないのちを助ける。ひとりの命も無駄にはさせない”という理念の元、”こうのとりのゆりかご”を設置した医療機関としての慈恵病院の理念の高さは評価するべきものだと私は思います。
 偽善的だとか、捨て子を助長するという意見もあります。しかし他人がどうあれ、善悪を決めるのは法ではなく、その人間の内にあります。以前にも述べましたが、哀しい現実に”何もしない”ことより”進んで何かをする”行為こそ評価されるべきです。
 今回記事のように、”こうのとりのゆりかご”に子供を預けたご両親が、病院との対話の中で再び我が子を引き取られました。病院が目指したものが良い結果を生んだ事を喜ばしく思います。どのようなことを言われようと貫く理念に敬意を表したいと思います。