後発医薬品の使用責任

 日本薬剤師会学術大会が10月7日、8日と神戸市で開かれました。
 後発医薬品使用促進は、分科会の中でも主要なテーマとして多くの意見が述べられました。わが国の後発医薬品の数量ベースでのシェアは17%と、アメリカ(63%)・イギリス(59%)などと比べて極端に低く、先発品使用が医療費の増大の一因でもあります。これを是正し、後発品の使用を数量ベースで30%にしようと、厚生労働省は啓蒙活動を盛んに行なっており、学術大会も、今夏に行なわれた朝日新聞薬剤師セミナーも、後発品使用推進活動の一端だったようにも思います。
 しかし、ランチョンセミナーで行なわれた“EBP(evidence-based pharmacotherapy)と薬剤師”では、溶出試験と生物学的同等性試験だけで認可された後発品が、果たして先発品と臨床学的に同等かという疑問を数々の事例をあげて述べられていました。また、後発品の審査に関する担当官が果たして何人いるのかという質問に、厚生労働省は数年にわたって答えないとも述べられていました。
 アメリカではFDAの中にジェネリック(後発品)局があり、ここで後発品の審査を行なっています。以前にも述べましたが、アメリカでは後発品使用を1960年代より研究し、その規格や試験法を議会においてケネディを中心とする公聴会を開いて行なっていったという経緯があります。そしてジェリック局では、NYの地下鉄ポスターに、“もし、ジェネリック医薬品で有害事象が生じた場合、その責任はFDAにある。”というコメントを載せているといいます。
 今回ポスター発表で、後発品に変えた後有害事象がおきたため先発品に戻した例が、数量的にはバラツキがあったものの掲載されていました。私の薬局でも、降圧剤で効果が出なかった例やハルシオンジェネリックで震戦が生じた例がありました。もし、この有害事象が医療事故として処理されれば、いったいその責任は誰が取るのでしょう。実はこのランチョンセミナーでは、厚労省の官僚は、『その責任は変更した後発品を選んだ薬剤師にある。』と述べたと発表されていました。PL法で製造物責任が問われる現代、溶出試験と生物学的同等性で先発品と同等と認めた厚労省のあり方は、果たしてアメリFDAジェネリック局と比較してどうなのでしょう。薬剤師だけに責任があるのでしょうか。
 高齢化が進み、医療費を抑制するため後発品のシェアを30%にしたいのはわかりますし、同じものなら積極的に患者様に変更も勧めます。しかし、先発品と異なる点が製法や基材にあるのならその情報は公開すべきだし、有害事象が起こった場合の責任が薬剤師のみというのはあまりに身勝手すぎると思います。
 後発品普及のために、医療事故がおこった場合の責任について、いま一度現場の声を聞くべきだと思います。
PS:次回は”ドラッグラグ”についてを予定しています