薬剤師がいない。

 私が在宅医療で訪問する老人宅には、ケアマネージャー・へルパーや医師が私と同様に訪問しています。先日訪問した時、患者様は気分が悪いと横になるや否や、嘔吐を繰り返し始めました。すぐに医師に連絡・往診の依頼をし、その後汚れた服を取り替え、吐瀉物を処理、部屋を掃除した後、ケアマネージャーに連絡、食事の内容を確認し、今後の食事あり方などをヘルパーさんを交え相談しました。幸い、嘔吐は一過性のもので問題はなかったのですが、今後のことでどうするのか、常日頃からのケアカンファレンスの必要性を感じます。
 一般に、介護保険のケアプランの中には“ケアカンファレンスの開催”を謳ってはいますが、実際にはなかなかできるものではありません。先日、ケアマネージャーとお話しする機会があったのですが、医療の世界で患者様と接している医師や薬剤師に、ケアカンファレンスの参加を依頼するのは、“敷居が高い“という感じを抱くそうで、なかなか依頼できないのが現実のようです。
 そんな中、厚生労働省は急速な高齢化に伴う医療費の伸びを抑制するため、療養病床の削減や入院日数の短縮化を打ち出しています。そして、その受け皿が”在宅医療“です。在宅医療には、その地域のおける介護と医療の連携が特に重要で、その見本を『尾道方式』に見ているように思われます。
 『尾道方式』は、1994年にそのコンセプトが作られ、地域医療における支援チームに患者本人や家族も入ったケアカンファレンスが開催されています。詳細は以下のURL。
   http://www.clinic.tkcnf.or.jp/b/b03/b0351.html
 ここには『尾道市医師会・長期支援ケアマネージメントプログラム』が図式されていますが、よく見るとその支援チームの中には“薬剤師”は入っていません。今後在宅医療や緩和医療に向け、積極的に動かなければいけない薬剤師の名前はここにはないのです。
 実は、それが今の薬剤師の置かれている、いやそのような立場に自ら追い込んだ、薬剤師の医療に対する意識の低さを物語っているように私には思えます。
 “うっとうしい”と言われたり、在宅患者を支援するチームにまで入れない薬剤師にならないために、薬剤師自らの意識の向上が必要なのではないでしょうか。