タミフルと異常行動:ワーキンググループ報告

 厚生労働省には、タミフルに起因するのではないかという異常行動について、これを調査するためのワーキンググループ(基礎WG、臨床WG)が設置されています。
 このうち、「リン酸オセルタミビル(タミフル)の基礎的調査研究のための基礎的調査検討のためのワーキンググループ(基礎WG)」が、6月にタミフルと異常行動についての因果関係を確認するために必要な非臨床試験(ヒトではなく動物をつかったもの)の実施を中外製薬に要請し、その試験の一部が10月24日報告されました。
 詳細は日系メディカルオンライン10月25日報告にあります。
    http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200710/504462.html
 試験報告結果は4つあります。

  1. インフルエンザウィルスは細胞内で増殖した後、ノイラミニダーゼ(NA)によって細胞内から放出されますが、タミフルはこのNAを阻害することによって新たな細胞への進入を阻害します。検査では、タミフル若しくは活性代謝物が、NA以外のものにも影響を与えることで、異常行動が引き起こされているのではないかというもので、結果はNAを選択的に阻害しており、他には影響を与えないことが報告されています。
  2. タミフルもしくは活性代謝物が、脳を異物の進入から守る血液脳関門(BBB)を通過し、更に保護機能であるP糖タンパクによるBBBの外側への排出も受けない事で、脳に蓄積されているのではないかという試験。結果では、たとえタミフルがBBBを通過してもP糖タンパクにより排出されることが確認され、脳には蓄積しないであろうとされています。
  3. 成熟ラットにタミフルを静脈投与した後(タミフルは経口内服薬ですが)、脳・脳脊髄液・血漿の中の濃度を測ることで、脳での蓄積を測定しようというもので、現在脳中の結果は報告されていませんが、脳脊髄液の濃度は血漿中より低く、蓄積の可能性が低いことを示唆しています。
  4. タミフルが脳内に入った後、活性代謝物が生成されるかを調べるもので、雌雄ラットを使って試験した結果、その可能性が低いことが説明されています。

 中外製薬に要請した試験は、この他にも
1:脳内に直接タミフルや活性代謝物を投与した場合
2:幼弱ラットと成熟ラットによる毒性試験
を求めており、いまだ完全にタミフルが異常行動の原因ではないとは言えないものの、その報告は評価されるべきものです。
 さて、これらの報告は私の知るところでは、読売新聞や一部業界紙では掲載され配信されましたが、他の大手報道機関では未だ報告されていません。勿論、すべてが明らかになったわけではないので、報道を控えているのかもしれませんが、国民の関心を呼んだ“タミフルと異常行動”について、現段階で知りうる情報は報道されるべきものではないでしょうか。
  読売オンラインhttp://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070521ik04.htm
 近く、臨床WGの報告がされるそうです。その報告が待たれます。