処方箋、後発品優先

 日本経済新聞11月10日朝刊に「処方箋、後発薬優先−原則利用に変更」という記事が掲載されました。
 記事によると、厚生労働省は、現在医薬品の中での利用率が約17%にとどまっている後発医薬品の普及を促すため

  1. 医師に対しては処方箋を原則として後発医薬品の使用を掲げる様式に変更する。
  2. 薬局に対しては後発医薬品を一定以上使用した薬局に調剤基本料を手厚く配分する。
  3. 患者には後発医薬品への“試用期間”を設けて、“お試し期間”を経た後そのまま継続するか、先発品に切り替えるかを患者が選べるようにする。

という対策を、中央社会保健医療協議会中医協)に提示したということです。
 政府は、医療費削減のため、現在の後発品利用率17%を2012年までに30%にあげるとしています。そのために、上記のような政策が提示されたわけですが、10月17日の中医協:診療報酬基本問題小委員会では、“処方箋様式変更”策に対し、日本医師会の委員が「処方権の侵害」「事故が起こった時の責任問題」を挙げて、反発されています。
     薬事日報記事 http://www.yakuji.co.jp/entry4676.html
 しかし、実際現場の医師の「後発医薬品意識調査」では、それほど強い抵抗感はないようで、この結果を受けてか、「処方箋様式変更」反対を唱えていた医師会も、11月9日開催された中医協で一転して賛成を表明されています。
     薬事日報記事 http://www.yakuji.co.jp/entry4902.html
 さて、後発医薬品を原則的に利用するためには、まず先発品と同等のものであることが大前提になります。もちろん、同成分同薬効の後発品が、現在の厚労省が求める試験(品質の安定性試験・先発品との生物学的同等性試験)をクリアしている以上、原則的には同じだと考えられます。そして、実際使用してみると、患者様にはほぼ同等の薬効が感じられます。
 但し、一部の患者様には、先発品と異なる添加剤を利用しているためか、薬疹がでたり、同等の効果が得られない例もあります。また、経管栄養を利用されている患者様に、お薬を“簡易懸濁法”で送る場合などでは、先発品なら55度のお湯に10分入れておけば溶けていた薬が、10分経っても溶けない場合があり(勿論、先発品より早く溶ける場合もあります)、はたして厚労省に提出した試験資料は正しいのかと感じる場合もあります。
 そして、上記の問題を踏まえたうえで、医師会委員が述べられた「患者様に事故が起こった時どうするのか。」という問題です。
 従来なら、お薬を選択した医師および製造した製薬会社に責任があると思いますが、もし提示された案のように、薬局が後発品を選ぶようになると、“数ある後発品がある中で、ある後発品を選び在庫した以上”当然薬局にも何らかの責任が発生すると思います。勿論、薬局が患者様への説明責任を果たし、患者様が“選んだ”後発品であったとしても、その後発品を在庫した薬局の責任は消えるものではありません。そして、従来厚労省が”後発品は先発品と同じもの”としてきたその責任も、同様に発生するはずです。今まで薬局は薬の選定にあまり気を使わず、医師の希望や薬価差を考慮しすぎた感を覚えます。今回、その責任を自覚することが、薬剤師の意識の向上・医療における立場の向上につながると考え、後発品使用推進に前向きに取り組むことが、新たな薬剤師像を作ることになるかもしれません。
 ただし、その選択の基準となる資料が、現在後発医薬品製造企業が作る添付文書でいい訳がありません。有識者厚労省の指導の下、拡充整備された資料の提供を製造企業には求めます。
 そして、厚労省には、アメリカのFDAジェネリック局のように、『ジェネリック(後発品)で起こった問題の責任はジェネリック局にある』という、責任の所在を明確化するよう求めたいものです。
 最後に、『薬局のオモテとウラ』“処方権の侵害とはいうけれど”というエントリーに、多くの薬剤師が意見を述べられています。ぜひご覧ください。
     http://blog.kumagaip.jp/article/6168842.html