規制改革会議

 毎日新聞12月7日の記事(大場伸也記)に、規制改革会議が、2次答申案の中で、“医療分野の規制緩和策”を提言していることが報じられています。
    http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071207k0000m010157000c.html
 具体的には

  1. 看護師による感冒・便秘・不眠・高血圧・糖尿病などに対する検査・薬の処方
  2. 助産師による正常分娩時の会陰切開・縫合
  3. 訪問介護における看護師による死亡確認や薬の処方

などの解禁です。
 これらの案の中の“薬の処方”について、薬剤師の中では、「薬の専門家は薬剤師であって、なぜ薬の処方が看護師に委ねられるのか。」「看護師による薬の処方で事故が起こった時はどうするのか。」という意見がされています。
 確かに、薬剤師はこれまで4年間の大学教育の中で、薬の構造式から薬理作用・薬物動態・相互作用などを学んできました。(現在は6年制となって、臨床薬学も学ぶカリキュラムになっています。)看護師教育の中で、これだけの知識が看護師に提供されているのかというと、それは無理なはずで、一般の方々も知っていることだと思います。
 それではどうしてこのような答申案が提示されたのでしょうか。
 実は、規制改革会議(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/)のメンバーの中に医療関係者は一人もいません。それだけに、その見方は一般の方に近いと思われます。その考え方から見ると、薬剤師というのは看護師の方ほど患者に近い立場にはいない、薬剤師はそれほど必要性を感じない職種なのだと感じられている事がわかります。治療にあっては、侵襲的手術以外は、薬がベースにあるはずです。その専門家たる薬剤師が、今までその存在意義を訴えてこなかった、また必要性のある薬の供給を適切にしなかった、例えば休日や夜間での供給体制をしてこなかった、こういった患者不在の薬剤師の意識構造が、現在の自らの立場を生んだのではないでしょうか。
 振り返ってみると、”ドンキー”のTV電話対応による深夜のOTC供給も、来年から始まる登録販売士によるリスク2・3類医薬品の販売も、今回の看護師による薬の処方解禁案も、元はと言えば薬剤師自らの社会的理念の認識不足から来るものに他なりません。
 規制改革会議の提案は、実際の医療からすると容認できるものではありません。しかし、その提案の背景となる薬剤師の社会的認識を考えると、薬剤師が襟を正す必要性を見出す事ができます。