インフルエンザと異常行動

12月17日の日系メディカルオンラインによると、12月16日厚生労働省“インフルエンザ罹患に伴う異常行動研究”の調査結果が発表になっています。
日経メディカルオンラインhttp://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/hotnews/int/200712/505098.html
この調査では、2006年〜2007年に起きた異常行動137例を解析したところ、6割にあたる82名がタミフルを服用していたが、約4割の52名は服用していなかったこと(不明が3人)が発表されています。また、同時にリレンザは9人、アセトアミノフェンは51人が使用したことも併記されています。
さらに、異常行動を起こした10歳未満(56人)と10歳以上(69人)を、厚生労働省:緊急安全性情報が出た3月20日を境に振り分けると、3月20日以前には90人・3月21日以降には35人が異常行動を起こしており、緊急安全性情報によるタミフルの使用が減っているにもかかわらず異常行動は起きていることがわかります。
これらの結果は何を意味するのか。おそらく、タミフル服用にかかわらず異常行動は起こることが示唆されているのではないでしょうか。
しかし、だからといってまだタミフルは大丈夫というわけではありません。今日のNHKクローズアップ現代”でも、マウスの神経細胞タミフルが入り込むと異常な活動が起こることが報告されていました。つまり、異常行動が起こるリスクを高める可能性が或る事は否定できないからです。
NHKの番組では、国立病院機構三重病院小児科医:中野先生がお話をされていました。先生は、「インフルエンザは重篤な脳症や、肺炎などを引き起こします。こういった感染症を防ぐにはそのウィルスを除去する・増殖させないことが基本です。その意味で抗ウィルス薬であるタミフルを使用する事には十分な意味があります。ただ、そのことを十分に患者様に説明し、同意を得ることが本来の医療です。」と述べられています。
今回の報告で、タミフルが異常行動を引き起こす可能性は低くなったかもしれません。しかし、大切なのは、インフルエンザが異常行動を引き起こすことがあること、そしてそれを防ぐ手段は、インフルエンザに罹患している子供たちの傍で、大人が十分に見守ってやることなのではないでしょうか。
“木を見て森を見ず”の例えもありますが、タミフルばかりにとらわれず、異常行動を起こし高熱で苦しむ子供達のために親や医療者に何ができるか、それを伝え続けることが大切なのだと私は思います。