後期高齢者医療制度の説明責任

 日本経済新聞2008年3月28日朝刊に、後期高齢者医療制度における都道府県別保険料確定の記事が出ています。

 保険料負担、格差2倍も・自治体徴収確定、月平均6000円
 4月から始まる75歳以上の高齢者を対象にした新たな医療保険後期高齢者医療制度」で、各都道府県が徴収する保険料が確定した。平均は月6000円で、最高の神奈川県(7700円)と最低の青森県(3900円)には約2倍の格差が出た。すでに病院で使う新しい保険証の配布が始まったが、民主党など野党が制度そのものに反対する姿勢を強めており、自治体の準備も遅れがち。1300万人を対象とする新制度は視界不良のまま離陸する可能性が高い。

 厚労省は新制度の導入で医療費の伸びを抑える狙い。福岡県や北海道など1人当たりの医療費が高い地域ほど保険料率が高めになるように設計している。一方で、高所得者にも高い保険料の負担を求める。高所得者が多く住む都道府県ほど1人当たりの平均保険料が高く出る面もある。 (09:35)

 今までの老人保健制度では、対象者(医療保険社会保険国民健康保険)の加入者の内、75歳以上もしくは65歳以上75歳未満の寝たきり等の状態にある加入者)は、医療保険に加入している事が原則でした。その為、保険証も医療保険証と老人保健証の二つを持つ必要がありましたが、4月からは独自の一つの保険証となり、既に配布が始まっています。また、保険料は各都道府県毎の個別の保険料となり、年金から天引きとなる事が決定されています。この事から保険料徴収の未払いも無くなるとされています。
 しかし、実際の現場では、高齢者にはこの制度に対する理解が確かに不十分で、自分たちがどれぐらいの保険料が徴収されるのか心配する声を多く聞きました。こういった患者様の声を聞き、説明するのは、いつも医療の現場です。
 さらに、4月1日からは新しい医療制度の下、多くの改正が行われ、後期高齢者医療制度の下の外来主治医制度や薬剤服用歴管理指導・服薬支援等が行われるよう求められています。こういった事を患者様に説明し、実践するのも現場です。
 高齢者の居住人口によって医療費がかかるのはやむを得ず、それによって保険料負担が都道府県によって異なるのは仕方ないことかもしれません。
 しかし、少なくとも今まで以上に保険料の負担を強いるのなら、対象者である高齢者に、どれぐらいの負担が今まで以上にかかるのか、それによってどのような医療が受けられるのか等の情報を十分説明し,患者様に理解して頂く事は、制度設計者の責務なのではないでしょうか。医療を行う現場でその説明までさせる現実には、異論をはさまざるを得ません。
 医療を患者様にとってより良いもの・わかりやすいものにする為に、医療機関は努力は惜しみません。
 しかし、社会保障制度の中で、医療制度を設計する方も、十分に国民への説明責任を果たして頂きたいと考えます。

PS:制度が始まった4月1日付で福田首相の”鶴の一声”の下、「後期高齢者医療制度」の名称が「長寿医療制度」と呼称されるようになりました。制度が始まるまで十分に時間があり、名称についても多くの反対の声があったにもかかわらず、制度が始まった初日にです。
 また4月3日には、舛添厚労大臣は記者団から「後期高齢者医療制度」の保険料の年金からの天引き問題について問われた際、与党議員からの呼称変更への批判が相次いだ事に対し、「名称についておっしゃる暇があれば、制度の意味を国民に説得すべきだ。」と反発したと朝日新聞に書かれています。制度を作った政府からは3月中旬、新聞の折り込みに”政府広報後期高齢者医療制度について”のビラがたった1枚入っていたぐらいだったと私は記憶していますが…