後発医薬品の代替調剤

 4月1日から、医療制度改正に伴う処方箋様式が変わり、処方医の後発医薬品への変更を不可とする指示がない限り、後発医薬品への代替調剤が認められるようになりました。厚生労働省でも後発医薬品推進の為のオリジナルポスターが作られ、患者様へ後発医薬品の普及が行われています。
 ”後発医薬品普及ポスター” http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/kouhatu-iyaku/dl/01.pdf
 また、「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則8条3」も変更され、保険薬剤師には患者様への後発医薬品に関する説明の義務、並びに後発医薬品を調剤するよう努める(努力義務)ことが明記されました。
 以前から、私のblogでは後発医薬品について多くのことを述べてきました。今回の後発品推進についても、多くの方々がこのblogを訪問なさっていますが、一つの記事としては書き記す事が多過ぎるので、詳しくは「後発医薬品」分類からお読みください。
 ”後発医薬品http://d.hatena.ne.jp/tomoworkaholic/archive?word=%2a%5b%b8%e5%c8%af%b0%e5%cc%f4%c9%ca%5d
 さて、制度変更により、4月1日より私の薬局でも後発医薬品への変更の対象となる全ての患者様への説明を開始しました。
 このエントリーでは、そこで起こった出来事を記す事で、変更の問題点を述べてみたいと想います。
 現在までのところ、受け付けた処方箋の発行機関をみると、開業医の多くが後発医薬品への変更を不可とされています。自分が責任をもって処方した医薬品が、たとえ同効果とはいえ添加物などが異なる後発医薬品に変わる事で、有害事象が患者様に起きた場合責任が取れないと変更不可にされる事は、十分理解できます。以前、医師へのアンケートで、”後発医薬品を使っても良いと考える医師が80%を占める”とありましたが、現実はそれとは異なる結果になったようです。
 また、現在のところ、説明した患者様の後発医薬品への変更は、1日平均5人いらっしゃいます。しかし、説明しても変えたくないと拒否する患者様もそれ以上にいらっしゃいます。
 その理由は

  1. 以前後発医薬品に変えてもらったが、効き目がやっぱり異なるように感じた。(デパス服用中)
  2. 以前服用した後発医薬品で手に痺れが来た。(ハルシオン服用中)
  3. 添加物に対するアレルギーがあるため、やっと自分にあった薬を変えたくない。
  4. 自分の症状は今の薬で安定している、多少安くなったとしても変える気はない。

となっています。
 それとは逆に、先発品より後発医薬品のほうが良く効いた気がするとおっしゃる患者様もいらっしゃいます。
 つまり、現実には厚労省のポスターにあるような、”効き目や安全性は先発品と同等です”という事は、絶対的ではありません。異なる添加物や製法特許のある医薬品においては、その事で薬物動態が先発品と異なる結果となり、十分な効果が得られなかったり、従来の先発品にはなかった有害作用が生じる場合も少なからずあるのです。勿論、多くの場合は問題なく効果が現れるでしょう。しかし、今回の例のように有害事象が現れた場合はどうするのか、誰が責任を持つのか、これは明確にする必要があります。医療訴訟が増えた昨今、起こってしまった有害事象に対する責任の所在が明確でなければ、後発品への変更を理解ができても、医師が上記のように「変更不可」とするのは当たり前に思えます。後発医薬品推進の為に、今一度責任の所在について議論が進むことが求められます。
 それと、今回厚生労働省製作のポスターで思ったことがあります。”欧米では5割を超える使用がある後発医薬品が、日本では2割に満たない使用率である”と言う表記です。
 確かに数字上ではそのとおりの結果です。では、なぜアメリカではそのように使われているかと言えば、それは一つの疾患に対し検査や治療行為・薬も含めて一定の金額しか払わないという”包括払い”が医療費において多くをを占めているからです。一定の金額しか払われないのなら、その中で治療にかかる費用を安くするしかない、畢竟医薬品においても先発品(ブランド品)ではなく、後発医薬品ジェネリック)が使われることになります。
 ただし、この一つに疾患に対する医療費もアメリカと日本では絶対的に違います。たとえば、虫垂炎の手術一つをとっても、アメリカでは約240万円かかりますが、日本では30数万円です。また、日本では国民皆保険制度がとられていますが、アメリカでは一部の低所得者や高齢者を除いて、民間の医療保険に加入してることも良く知られている事実です。
 このように、異なる制度や医療費をとっている他国とわが国をおしなべて比較することが正しいと言えるのでしょうか。
 他国の制度を良く知り、それではわが国はどのように医療費を考えるのか、国民に十分に説明することが現在必要なのではないかと私は思います。