終末期相談支援料

 本年4月に改正になった診療報酬には、”後期高齢者終末期相談支援料”というのが新設されています。
 これは、”安心できる終末期の医療の実現を目的として、患者本人による終末期の医療内容の決定のための医師等の医療従事者による適切な情報の提供と説明を評価する。”もので、具体的内容としては

医師が一般的に認められている医学的知見に基づき回復を見込むことが難しいと判断した後期高齢者について、患者の同意を得て、医師、看護師、その他関係職種が共同し、患者及びその家族等とともに、終末期における診療方針等について十分に話し合い、その内容を文書等にまとめた場合に評価する。
後期高齢者終末期相談支援料   200点(1回に限る)
[算定要件]
終末期における診療方針等について十分に話し合い、文書(電子媒体を含む)又は映像により記録した媒体(以下、「文書等」という。)にまとめて提供した場合に算定する
患者に対して、現在の病状、今後予想される病状の変化等について説明し、病状に基づく介護を含めた生活支援、病状が急変した場合の延命治療等の実施の希望、急変時の搬送の希望並びに希望する際は搬送先の医療機関の連絡先等終末期における診療方針について話し合い、文書等にとりまとめ提供する
入院中の患者の診療方針について、患者及び家族等と話し合いを行うことは日常の診療においても必要なことであることから、入院中の患者については、特に連続して1時間以上にわたり話し合いを行った場合に限り算定できることとする
患者の意思の決定に当たっては、「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」(平成18年5月21日医政発第0521011号)及び「終末期医療に関するガイドライン」(日本医師会)等を参考とすること

となっています。
 5月22日、舛添厚生労働大臣はこの”終末期相談支援料”について1時中止を検討する考えを示唆しました。

「終末期相談支援料」、一時凍結を検討 舛添厚労相
2008年05月22日朝日新聞

 後期高齢者医療制度で、患者と家族と医師らが終末期の治療方針を話し合い、書面にした場合に医療機関に診療報酬として支払われる「終末期相談支援料」について、舛添厚生労働相は22日、「一時凍結を含め、国民の目線で考えたい」と述べ、一時中止を検討する考えを示した。

 東京都内で記者団に語った。舛添氏は、支援料の是非を検討する厚労相直属の組織を設ける考えも明らかにした。

 支援料は、4月から始まった新制度に加入する75歳以上の人が対象。回復が難しい患者や家族に、医師が予想される病状を説明し、急変時に病院に搬送するか、人工呼吸器を使うかなどの希望を聞く。

 厚労省は「現場で患者の意思確認に取り組む医師を支えるための仕組み」と説明するが、野党は「延命治療にかかる医療費抑制が狙い」と批判し、与党内からも「国民感情を著しく害した」と見直しを求める声が出ていた。

 舛添氏は、「終末期医療は国民感情の問題。専門家の意見でやってきたことを反省しないといけない」と話した。

 一方、診療報酬の実質的な決定権を持つ中央社会保険医療協議会中医協)は、患者や医師へのアンケートなどの検証を行った上で必要に応じて見直す方向で一致しており、検証なしの一時凍結には反発も予想される。

 現場では、これ以上回復する見込みがない患者様が実際にいらっしゃいます。苦しい治療や痛みが継続する中、残された生の時間を諦めずに積極的な治療に費するのも、また痛みだけを取り除き自分がやり残した事に費するのも、どちらも等しく正しいと私は思っています。
 しかし、患者様がそういった判断をする為には、医療者による正確な病状の説明と患者様の理解が必要です。限りある生の時間を”よく生きる”為には、”どう生きたいのか、どう過ごしたいのか”を医療者と患者様の間で話し合う事が絶対に必要なのです。
 それが現場での”終末期相談支援”の持つ本当の意味です。政治の世界で、”延命治療にかかる医療費抑制が狙い”と憶測する事もありますが、私には”下司の勘繰り”としか思えません。安易に死ぬことを目指すのではなく、真剣に生きる事を考えるために、なくてなならない制度だと私は思います。
 ただ、この費用(2000円)を頂く事が本当に必要なのか、また算定する時が”患者様の死後”というのは余りにも家族の気持ちを無視しているのではないかと思い、個人的には請求などできないと考えています。