有害事象の責任

 先日、朝日新聞の”声”の欄に医師からの投書がありました。
 その中身は、”「処方箋に後発品変更不可」の印を押さずに処方箋を出したら、薬局で変更され、その結果有害事象が患者さまに生じた。その責任の一端は薬剤師にある。…”というものだったと思います。
 どのような理由で有害事象生じたのか、それが明記されていない以上、簡単に意見を述べることはできませんが、しかし後発品の成分が同じだから、効果も副作用も同じではないことは明白です。
 例えば、ホクナリンテープという経皮吸収型・気管支拡張剤がありますが、これにもジェネリック(後発:GE)医薬品が多数出ています。もちろん、溶出試験・生物学的同等性も厚労省の製造許可条件をクリアしています。しかし、よく見ると、すべてのGEがAUC(血中濃度‐時間曲線下面積)がほぼ同じであっても、先発品(ホクナリンテープ)に比べて血中濃度推移が前倒しになっています。これを考えると、血中濃度の推移が同じあるなら、皮膚からの吸収過程が異なる事がわかります。
 つまり、律速段階が消失過程にあるわけで、もしこの消失過程に差があれば(例えば薬物分解能の低い高齢者など)、吸収過程が早いGEでは、通常より強い効果・有害事象が現れることになります。
 さて、そこで責任問題です。
 有害事象が現れた場合、責任を取るのは一体誰でしょう。

  1. 許可した厚生労働省
  2. 製造したメーカー
  3. 処方不可としなかった医師
  4. 選んだ・有害事象の現れる確率をそこまで説明しなかった薬剤師
  5. 後発品変更を同意した患者

 こう考えると、一概に誰が悪いと決められるものでもなさそうです。ただし、薬剤師としては、こういった問題が起こった時の為に、後発品を選んだ基準を明確にしなければなりません。