後期高齢者医療制度:厚労大臣私案

 2008年10月7日舛添厚生労働大臣は「後期高齢者医療制度に関する検討会」(塩川正十郎座長)において、後期高齢者医療制度の見直しについて私案を提示しました。
  日本経済新聞http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20081008AT3S0702F07102008.html
 これによると、

  1. 反発著しい75歳以上という年齢による線引きを止め、後期高齢者医療制度国民健康保険に組み入れ、全ての年齢層が加入する新制度とする。。但し、被用者保険(健康保険組合など)に加入している人は、引き続き加入できることとする。
  2. 運営主体を都道府県単位に編成する。(従来の国民健康保険は市町村単位)
  3. 財源は税の比率を増やさざるを得ない。福祉目的税はどうか。

などが挙がっているようです。
 さて、後期高齢者医療制度がそもそも新設された一つの理由は、世代間の負担をはっきりと明示すること(保険料1割・公費5割・現役世代の支援金4割)だったはずです。大臣私案のように再編されると、大部分の高齢者を抱える国民健康保険は、どれほどの支援金を被用者保険からもらう事になるのでしょう。
 また福祉目的税を導入するなど重要な税制を変える制度をほのめかし、医療の財源の具体的負担割合を明示しない案が、なぜ議論の俎上に挙げられることができるのでしょう。
 すべての制度には財源が必要です。耳に聞こえのいい話をするだけで、その財源を明示しない案など論じる値打ちもありません。
 医療制度に関する話ではありませんが、”フィンランド豊かさのメソッド”(集英社新書:堀内都喜子著)によると、フィンランドは1990年代はじめ、バブル崩壊による経済危機に襲われ、失業率も20%にまで上がりました。しかし今やノキアをはじめとする情報産業などにより、フィンランドは国際競争力No1にまで昇りました。当時、教育大臣・運輸通信大臣を務めたヘノイネン氏は、「不況回復に際しての政治家の役割は?」という問いに対し、「政治化の役割は、国がいかに危機に瀕しているかという事を国民に知らせ、それを克服するには大きな変化・痛みが不可欠であるという事を分かってもらうように説くことだし、そして状況を判断し最もふさわしいと言える決断を迅速に行う事だ。」と述べています。
  ”フィンランド豊かさのメソッド”堀内都喜子著 フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453))
 このような政治家がいるのに対し、我が国の厚生労働大臣ともあろう方が、選挙対策や15日に行われる年金天引きによる批判をかわす狙いを持った私案提示など、つまらぬスタンドプレイを行う事に失望を感じざるを得ないのです。