H5N1豚に感染

 新型インフルエンザの報道が相次ぐ中、2009年5月4日付朝日新聞に、”鳥インフルエンザ(H5N1)が豚にも拡大”という記事が掲載されています。
 これは、神戸大学感染症センターが、インドネシア:アイルランガ大学熱帯病研究所と共同で、2005年5〜7年に402頭の豚の感染状況を調査した結果わかったものです。
 記事によれば、402頭の豚のうち1割強を超す52頭にH5N1がの感染が認められ、その内1頭は既にヒトにも感染するタイプに変異していたそうです。つまり、1年以上前にはすでに人に感染できるH5N1が存在したわけですから、現在ではさらなる変異が生じている事になります。
 鳥由来のH5N1は、2003年11月〜09年4月までのわずか6か月で、421人の感染者を生み、その内257人が死亡しました。致死率61%は今回の致死率の比ではありません。
 現在わが国では、豚インフルエンザ由来の新型インフルエンザに対し水際作戦が取られると共に、舛添厚生労働大臣は「ワクチンの製造と備蓄しているタミフルリレンザの使用計画」を発表しています。
 しかし新型インフルエンザは専門家が指摘しているとおり弱毒です。「変異をして強毒化したらどうするのか。」などの意見もありますが、通常の処置をとれば回復する可能性が高い感染症です。
 このような感染症に対し、ワクチン製造の為の労力や資源(ワクチン製造の為に使用する鶏卵)を費やしてよいのでしょうか。勿論、死者も出ているし、これからの変異も考えると”作るな”という事ではありません。
 ワクチン製造において、限られた人・物という資源を、H5N1・通常の季節性インフルエンザ・豚インフルエンザにいかに適切に配分するかを冷静に判断し、対策をとるべきなのではないかと思うのです。
 その意味で、舛添厚生労働大臣の発表はいかにも拙速という感がぬぐえません。